■50年の伝統、咸興冷めんの元祖、五壮洞興南店

 店に入るといきなり、温厚そうなおばあさんの顔が描かれた肖像画が目に入る。その下には「1953年から」と書かれている。ソウルで最も由緒ある店、咸興冷めんの元祖であることを示す証だ。元々五壮洞は咸興冷めんで有名な地だ。そのうちで最も早く店を構えたのが五壮洞興南店で、肖像画のおばあさんがこの地にテントを張り冷めんを売り始めたのがその始祖だという。北朝鮮が故郷だというおばあさんは、韓国に避難し、巨済、釜山を経てソウルにたどり着いた。テント張りの冷めん店は、いつしかわらぶきの家に変わり、50数年の歳月を経て現在のような立派な建物となった。そしてその味は3代にわたって受け継がれている。


 あっさりとした味が平壌冷めんの魅力なら、咸興冷めんの魅力はピリリとした辛さとしこしこして切れにくい麺、粘り気のある刺身だ。ピリリと辛いフェ冷めんを食べ、温かいスープを1杯飲み干す、経験してみなければ分からない味だ。同店の冷めんがとりわけまったりとした味がするのは薬味に秘訣があるからだ。肖像画のおばあさんの嫁で2代目の社長によると、冷めんの上に載せるカレイの刺身を1日冷蔵熟成することがその秘訣らしい。ソースに使われる薬味醤油に牛骨のだしを混ぜるのも他店とは異なる。客が来て麺を打つのも同店の原則だ。同店の冷めんは特別な薬味を使用しているためそれほど辛くなく、砂糖を少し入れればおいしく食べられる。水の代わりに牛骨のスープが辛さをやわらげてくれるため薬味醤油をたっぷり入れてもよさそうだ。それでも辛さに自信がないのなら、ムル冷めんを味わうのもいい。咸興冷めんのムル冷めんは平壌冷めんとは一味違ったおいしさがある。冷めんで勝負する同店の主なメニューは、フェ冷めん、ビビン冷めん、ムル冷めんで、価格はすべて7000ウォン(約530円)だ。

■咸興冷めん

 咸興道地方の郷土料理。一般に「フェ冷めん」といい、じゃがいもまたはサツマイモのでんぷんで麺を作り、辛くあえたエイの刺身などをのせて食べる。冷めんに載せる刺身は、エイのほかカレイも使われる。材料を刻み、唐辛子と薬味を混ぜてあえる。キュウリ、大根などを細切りにしてのせる。あえた刺身の代わりに薬味醤油だけを入れ、蒸した豚肉を載せて食べたりもする。でんぷんという材料の特性上、麺がのびやすいため、主にスープのないビビン冷めんとして食べることが多いが、最近ではそばを混合させムル冷めんで食べたりもする。

■咸興冷めんをおいしく食べる方法

 咸興冷めんのもう一つの魅力は、自身の好みに味を調整できるということ。薬味醤油と砂糖、酢、からし、ごま油を自身の好みに合わせて入れれば自分だけの冷めんの味を味わうことができる。



*アクセス:地下鉄3号線乙支路4街駅8番出口を出て、中区庁の交差点を左折、約180メートル

*所在地:ソウル市中区五壮洞101-7

*TEL:02‐2266‐0735

*営業時間:11時-21時30分

*定休日:第2第4水曜日

■元祖に挑戦状を叩きつける / 異色冷めん

冷めんサラダ&冷めんポッサム(ゆで豚肉の葉野菜包み)」

 冷めんと果物、サラダが出会った。各種果物と辛くてすっぱいビビン冷めんがマッチした冷めんサラダは、数十種類の薬味が入ったソースが絶品。多少辛いかもしれないが、さわやかな酸っぱさの果物が辛さを中和してくれる。本業は居酒屋だが、冷めんサラダを味わうためにくる客が多いという。

 辛さに自信がないなら、冷めんポッサムを注文しよう。ビビン冷めんの1種だが、麺と果物、肉が絶妙にマッチした味を経験することができる。冷めんサラダは2-3人で食べられ、価格は14900ウォン(約1100円)。マスターが直接冷めんを混ぜてくれるので驚かないように。それが「情」であり、韓国スタイルなのだ。

*アクセス:地下鉄2号線江南駅7番出口を出て、アルファ文具の路地を左折し、2本目の路地を右折し斜向かいに見える建物の2階、シティー劇場裏。

*所在地:ソウル市江南区駅三洞917-31

*TEL:02‐569‐8730

*営業時間:18時-深夜2時30分

*定休日:第2第4水曜日

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