泥だらけの沼に入れば、人類みな兄弟!? 年齢も地位も人種も国籍も関係ない。泥に跳び込んだその瞬間から、みんな肌の色が同じになり、「ドロ族」という同じ名前になる。7月 11日から大川海水浴場(忠清南道保寧市)で9日間にわたり開催される、今や韓国を代表する祭りとなった「第12回保寧泥祭り」のことだ。

 「資源が豊かで、美しい山と水に恵まれ、子々孫々まで平穏に過ごせる」という意味から、忠清南道保寧市は古くから「万世保寧」と呼ばれてきた。だが、全国的には、貝殻の粉でできた白浜が続く大川海水浴場くらいしか名物がなかった保寧市。その保寧市が、世界各国から観光客が訪れる新たな都市に生まれ変わったのは、白浜ではなく、「黒い泥」の存在が明らかになってからだ。約136キロにわたる長い海岸線に、掃いて捨てるほどあった泥だが、気づいてみればダイヤモンドの原石だった。そして、保寧市はこの10年間、市の人口を上回るほど世界の人々が集まる巨大な観光都市に生まれ変わった。今や「万世保寧」ではなく「世界の保寧」になったといえよう。

 見た目とは違い、触り心地がよくて美容効果もバツグンなことで知られる保寧の泥は、1996年に初めて化粧品になった。説明書によると、保寧産の泥で作った化粧品は「人体に有益な遠赤外線が多く放出されており、外国産製品に比べてもゲルマニウム・ミネラル・ベントナイトなどの成分含有量が高く、肌のアンチエイジングに効果がある」という。そして、98年からは化粧品加工前段階の「新鮮な」泥を直接体に塗る体験が無料でできる本格的な「泥祭り」が始まった。去年だけで外国人10万人を含め観光客200万人が訪れ、これまでの来場客数は通算2000万人に達する。このため、韓国の祭りの中でも、外国人が最も多く参加するイベントとして知られるようになった。英語・日本語・中国語によるサービスも提供している。

泥でストレス解消!

 泥を直接感じ、体験できる催しはいろいろあるが、何よりも祭りのメーンは参加者がいっせいに泥に跳び込み、転がり回る最も「原始的な」イベントだ。現場では誰が誰だか分からなくなるほど泥まみれになる。見るだけの「受け身」的な旅行やリゾートとは違い、泥祭りはまさに全身を使って楽しむ、生き生きとした「参加型」イベントだ。

 体を動かせばストレス解消にも。カッコなんかつけていないで、泥の中に跳び込めば、たまった疲れや単調な日々から解放される。わたしたちが小さいころは、「泥遊びなんてやめなさい」と耳にタコができるほど聞かされたが、ここにはそういう人はいない。むしろ、転がり回るほど肌のハリがよくなり、運動の効果もある。そのうえ、ハイテンションではじけている人ほど注目を浴び、祭りの人気者になれる。年齢・地位・体面などは関係ない。人種も国籍もない。こうした気持ちは、外国人参加者が多いからこそ、なおのこと強く感じられる。

 まるでここはパラダイスのよう。「口には入れないようにして」という程度のルールを守ればOK。もう一つ言うなら、どんなに泥だらけになっても、少なくとも自分の仲間ぐらいは見分けられる程度の視野を確保しておこう。

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