―  これまでさまざまな作品に出演していますが、ご自身で転機となったと言える作品は何でしょうか。

 「新人賞もいただいた『人生画報』ですね。この作品で、演技というのはこういうものなんだと目からうろこが落ちたようでした。この作品からは、俳優としてなんとかやっていけるかなと思いましたし、ソン・イルグクという名を高めてくれました。それまでにはたくさんの短編ドラマをやりましたが、それはもう言わないほうがいいですね(笑)」

― 『人生画報』は219話という大変な話数でしたが、体調の維持や苦労した点はありますか。

 「そのころはまだ新人でしたので、言われるがまま無我夢中でやりました。撮影は楽しかったので辛いことなど何もありませんでした。朝のドラマの視聴率は10%を超えれば良い方ですが、このドラマは20%を越えていました。私の長いファンはこの作品からずっと応援してくれています」

― 今や国民的大スターとなり、もちろん良いことはいろいろあると思いますが、人気者になって逆に困ったことなどはありますか。

 「母が女優だったので俳優がどういうものかを昔から知っていますので、俳優に私生活がないのもわかっています。それを特に不自由だと感じることはなく、良いと思うことの方が全然多いです」


― 今回の日本でも、行く先々で多くのファンに囲まれるようですが、大変ではないですか。

 「自分がいるのは、ファンの方々がいるおかげ。感謝していて、ありがたいだけです」

― とても紳士的で穏やかなソン・イルグクさんですが、ご自身の性格を教えてください。

 「 内向的で、穏やかで物静かな性格だと思います。親しくなって打ち解ければいたずらしたりもしますが、親しくなるには時間がかかるんです(笑)。物事はいい方向に考えることができる、楽天家だと思います」

 今回の訪日では、『風の国』のPR活動も積極的に行った。『風の国』は現在BSフジにて好評を博しており、DVDも6月にレンタルが開始される。多忙なスケジュールをこなしたソン・イルグクは、持ち前のタフさと紳士的な態度、人懐こい笑顔で周囲の人々を安堵(あんど)させた。

 『風の国』が終わってからは、昨年結婚した新妻と穏やかな時間を過ごしているとされる。幸せで安寧な生活のせいか、少しふっくらした印象だが、彼の穏健な魅力をより増したようにも見える。「スターらしくないスター」ソン・イルグクに、最後に今後の俳優としての目標を尋ねると、笑顔でこう答えた。

 「自分はまだまだこれからですので、努力するだけです。俳優は60歳からがスタートだと思っています(笑)。努力することが人生の目標です」。


東京=野崎友子通信員

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