ソウルの新世界デパート本店の地下にある食料品売り場には、手ごろな惣菜を販売している店が20件ほどある。その中に、いつも10人余りが列を作っている店がある。会社員たちの帰宅時間になるとその列はさらに長くなり、20人ほどが並ぶ。この行列は、一つ1500ウォン(約170円)の肉まんを買いに来た人々。この肉まんを売っている広さ20平方メートル余りの「上海食品店」には、肉まんの皮を作っている人だけで6人が、休みなく生地をこねている。蒸し器では次々に作り立ての肉まんが蒸されていき、平日で500万ウォン(約56万円)、休日で800万ウォン(約90万円)の売り上げがあるという。店の前には6‐7つのイスがあるが、ほとんどはテイクアウトしていく。

 この店で販売している肉まんは2種。辛い四川風肉まんと普通の肉まん。大きさは大人の握りこぶし程度。一般の肉まんよりも皮が柔らかく香ばしい。中身は長ネギや白菜など野菜が中心。肉をたくさん使い、こってりした中国の肉まんとは違い、さっぱりしているのが特徴だ。辛い肉まんにはラー油のような赤い汁がにじんでいる。しかし汗が吹き出るほど辛いところを見ると、ラー油ではないようだ。店の名前は中国風だが、韓国人に馴染みのある味だ。

 大きくて具がたっぷり入っているため、二つ食べるとお腹が一杯になる。女性なら一つでも十分かもしれない。冷めた後に温め直してもたっぷりの肉汁はそのままなのが、「テイクアウト」の多い理由だ。

 この肉まんは、旧・山東出身の華僑たちが韓国で作って食べていた肉まんを華僑3世の女社長が韓国風にアレンジしたもの。皮が美味しいのは、生地に粉末の薬味を練り込んでいるためだという。温かい場所に数時間置いて生地を熟成させているため、口の中にべったり張り付いたり、中身と皮がばらばらになってしまうこともない。辛いソースの材料は企業秘密だとか。

 2005年に新世界デパート新館がオープンしたときに入店し、買い物客や近くの会社員らの口コミですぐにうわさが広がった。寒くないときには昼休みに肉まんを買い、デパート屋上の庭園で食べる会社員も多いという。地下鉄・会賢駅から新世界デパート新館に通じる地下通路を歩いてデパートに入ると、すぐ右側にある。3万ウォン(約3360円)以上の領収証があると1時間無料駐車が可能だが、20分以内に車を出せば無料のため、肉まんを買うだけなら駐車料金の心配もない。

 昨年春に新世界デパート竹田店(京畿道竜仁市)にオープンした支店は15平方メートルとさらに狭いが、売り上げは本店を超えるという。デパートの営業時間(午前10時30分‐午後8時)、休業日(毎月1回)通りに営業している。

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