最近のテレビドラマでは「女」から「男」になった俳優2人の活躍が目につく。観客1000万人を動員した大ヒット映画『王の男』で美しくたおやかな女形コンギルを演じたイ・ジュンギはそのイメージを完全に壊し、ドラマ『犬とオオカミの時間』で復讐心に燃える「強い男」に生まれ変わった。一方ユン・ウネは、今話題のドラマ『コーヒープリンス1号店』で純朴な「男装の麗人」のヒロインを演じ、人気を集めている。予想外のイメージチェンジぶりに喜ぶ視聴者は、硬い殻を打ち破ったスターたちの姿を歓迎している。現在、大衆文化でも静かに広がりつつある「性の超越」もその背景にある。両方の性を行き来しながら熱演している2人に話を聞いてみた。


◆女形→タフな情報員に変身したイ・ジュンギ

 「『王の男』は当たりくじであると同時に、僕の前途への足かせ。女性っぽい? 典型的なB型男です」

 「いつもアクションに憧れを持っていました。男性的な感情ではなく、“ファンタジー”のようなアクションをお見せしたいです」

 先月31日午後、京畿道華城のドラマ撮影現場にハーフパンツ姿で現れたイ・ジュンギは、穏やかな表情だった。「ドラマがスタートする前は、皆さんが僕を見ると今も“コンギル”を連想するのではないかと心配で夜も眠れないほどでした。でもラッキーなことに、視聴者の皆さんは自然にドラマに入り込んでいるようで、ホッとしました」

 MBC水木ドラマ『犬とオオカミの時間』でイ・ジュンギが演じる「イ・スヒョン」は強くて熱い男だ。死んだ母親の復讐を果たすため、タイの暴力組織「青幇」に潜入した国家情報院の要員。ドラマの冒頭では暴力団にリンチされ縛られたまま川に投げ込まれる。しかめた顔、次々と繰り出す拳、素早いキックが一体となったアクションは、イ・ジュンギの代名詞だった女性的なイメージを根底から消し去りつつある。リングに立ち、ムエタイ(タイ式キックボクシング)の決闘を行うシーン(1日放送)は圧巻だった。「テコンドー3段だそうですが、それでアクションがサマになっているんですね」と尋ねると、「そんなー。それなら韓国人はみんなアクションスターじゃないですか」と言って笑った。

 「小学1年生のとき、体が弱くて父親に手を引かれて道場に行きました。それから高校生のときまで通い続けました。でも、それが全てではありません。ソウル芸術大学在学中にはアクションサークルで教えてもらったり、アクロバットのサークルにも参加したりしました。俳優の身体能力を最大限に生かす方法を学ぶ場所です。実は、初めはバック転を1回くらいはできるようになりたくて入ったんですが…。ハハハ」

 「肉体的にハードなのは覚悟していたから問題ありませんが、思ったより早く体力を消耗し、狙い通りのシーンにならないケースが多くて自分でも嫌になってしまいます」

 『王の男』の話をしないわけにはいかなかった。「何万分の1という確率の“当たりくじ”に当たったようなものです。でも、もう僕には“当たりくじ”が引けないことも分かっています」

 彼は「映画公開時は世間の爆発的な反響を楽しんでいました」と言いながらも、「心の片隅には“こうした状況は僕の将来の足かせになるかもしれない”という不安もありました」と告白した。そうした懸念は何倍も大きな現実となり、彼の前に立ちはだかった。世間は映画で演じた役柄をイ・ジュンギと同一視していた。「ハードなアクションで勝負する」という彼の覚悟は、遠回りするしかなかった。「幸運はただ恵まれるものではないでしょう? 幸運にオマケがついてくるのは、よくあることです」

 光州民主化運動(光州事件)に真正面から挑んだ映画『華麗なる休暇』で、デモの先頭に立つ高校生ジヌを演じたのも、そうした意図からだ。彼は「正直言って、僕と同じ世代の若者たちにとって当時の状況は、外国の出来事のように受け止められているかもしれません。でも、台本を読んでみると、感情が抑えきれなくなり、涙が止まりませんでした。全羅道方言での演技をずっとやってみたかったのですが、監督に止められてできなかったのが心残りです」

 物静かそうな外見とは違い、彼が分析する自分の性格は「明るく義理堅いが、その場の気分次第で感情の起伏が激しい“典型的なB型”」だそうだ。そう話すうちにまじめな表情で「本当に、今まで周りの人から女っぽいと言われたことは1度もありません。逆によく、“走り回るな”“ちょっと落ち着きなさい”と言われました。実は目立つのが好きな性格みたいです」と教えてくれた。

 彼は、「一夜にしてスターになった者を襲う落とし穴」の存在をはっきりと認識していた。「世間は僕を認めてくれたのではありません。関心を注いでくれただけです。関心を注ぐのは簡単ですが、冷めるのも早い。観客に信頼を与え続けられなければ、俳優はダメになります。砕け散るにしても、真実を胸にぶつかっていくしかありません」

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