Rain(26)は記者の目の前にあるプラスチック製のイスに座っていた。昨晩、彼は日本から帰国した。「ワールドスター」は自身の顔が描かれたチャーター便に乗り、果てしない外の世界に飛び立っていった。多忙なスケジュールは数分たりとも無駄な時間を許さない。Rainのスタッフは、インタビューを受けるため日程が調整できるかどうか、何日も協議したという。初夏のような日差しがまぶしい。記者は初めて会う若者に、こんな言葉をかけた。

-こんな日差しのまぶしい日は何をしたい?

 「スクーターみたいなミニバイクに乗って走るのが好きです。今日もひと回りしたいような気分ですが、スケジュールが入っているので…。ときどき友達数人と一緒にソウル市内をバイクで走っています」


-「ワールドスター」なのにミニバイクに乗って走り回っても大丈夫?

 「バイクで走る時はヘルメットをかぶっているので、みんな気が付かないですね。たまに見つかってサインをする時もありますが、ほとんどの場合、“まさかRainのはずが…”と思って通り過ぎるようです」

 ソウル市清潭洞にある彼の所属事務所に向かう途中、記者の歩んできた人生とは別世界を生きる「新種族」と一体どんな話をすればいいのか、不安に思った。「新種族のワールドスター」がふかふかのイスに偉そうに脚を組んだままふんぞり返っている姿すら思い浮かべた。

 ところが実際に会ったRainは、楽屋でメーク中に記者のインタビューを受けた。中途半端な姿勢でペコリとあいさつする彼を見て、初めて会うのに親しみを感じた。その表情にはまだ少年の面影が残っていた。

-そうですか。バイクは好きだけど歌やダンスはあまり好きじゃない?

 「歌やダンスは毎日しているから、好きというよりも…こんなことを言うと少し変かもしれませんが…ある瞬間から人生の一部になってしまったんです。中学2年の時から歌ったりダンスをしたりしているから、今年で約12年です。今は無意識に1日中、歌を口ずさんでいます。それに僕は見聞きしたものはすべてダンスにできないかと思っています。おじいさんが杖を持っていれば、“杖でダンスができないかな?”とか、車に乗っていれば、“車の運転がダンスにならないかな?”とか、ずっとそんな風に何かを考えているんです」

 見たり聞いたりする物事・現象をダンスにするとは、世の中の出来事を文章に書きつづり生活の糧にしている記者には衝撃的だ。


-だとすると、これまでステージ上でRainさんが見せてきたすべてのダンスはあなたの創造した作品?

 「ほとんどは僕が作ったものです。アドバイスが必要なところはある程度相談しますが、僕がほとんどの振付をします」

-十代のころは好きだから歌ったりダンスをしたりしただろうけど、それが職業になった今も気持ちは変わらない?

 「芸能人だからといって、僕は“公人”だとは思いません。公人という義務感があったら歌やダンスを続けるのがイヤになることもあったでしょう。僕はただ、芸能人というすてきな仕事を持つ1人の人間です。好きで歌い、好きでダンスをするのです。とてもラッキーなのは、僕は好きなことをしながらお金をいただけるということです。もちろん、これは仕事だから危機感もあります。果てしなく努力しなければならないし、何かを創造し開発していかなければならないからです。ある瞬間、ふと立ち止まると、皆は僕にそっぽを向き、もっとすてきな新人たちがデビューした時に忘れ去られてしまうかもしれません。それでも1‐2年かけて準備してきた音楽を、いっぺんに爆発させられる魅力は到底言葉にはできません」

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