ある芸能人が話すチャン・ヒョク(31)のエピソードをひとつ。チャン・ヒョクが芸能企画会社サイダースで「研修生」をしていたころの話だ。先輩たちが帰り際に「スーツを洗濯しておいて」と言った。次の日、先輩が見たのはクリーニングに出されたスーツではなく、洗濯機で洗って干されたスーツだった。チャン・ヒョクの性格を知っている人ならチャン・ヒョクを責めることはできないだろう。映画界で「生真面目な俳優」として有名なチャン・ヒョク。そんなチャン・ヒョクが兵役の不正に関連したという事実は、だからこそなお衝撃的だった。

 昨年11月に除隊した後もチャン・ヒョクは沈黙を続けた。そしてカムバック作に選んだのはMBCの水木ドラマ『ありがとうございます』。チャン・ヒョクはこのドラマに出演してからもまだ沈黙している。しかし今回の沈黙は肯定的だ。チャン・ヒョクはもうこのドラマの主人公「ミン・ギソ」として視聴者に記憶され始めているからだ。それもかなり印象深く。ドラマの掲示板には「今ではミン・ギソに見えるチャン・ヒョク」「チャン・ヒョクとミン・ギソが一体になったように思える」など肯定的な評価が相次いでいる。

 同ドラマでチャン・ヒョクは胸の中の「絶望」と「傷」を通した言葉でしか自分を表現できない医師「ミン・ギソ」役を演じている。「病を見るのではなく病人を見よ」と話していた父は、患者の裏切りにより没落する。そしてミン・ギソは「病人を見ずに病だけを見る」生意気な医師になっていく。

 同ドラマは独特なドラマだ。流行のようになっている専門職を描いたドラマではなく、人間関係が絡まり合うメロドラマでもない。シングルマザーのヨンシン(コン・ヒョジン)、輸血によってエイズにかかったイ・ボム(ソ・シネ)、痴呆症にかかった祖父(シン・グ)など、登場人物全員が主人公だ。チャン・ヒョクがミン・ギソに完全に染まり始めてから、同ドラマは水木ドラマの中で視聴率1位(13.9%)を記録するようになった。

 「除隊後最初の作品なのでたくさん悩んだ」というチャン・ヒョクは、ミン・ギソというキャラクターの最も魅力的な部分について、「『俺は本当に帰るところがない』という考えから『俺にはもう帰る所がある』という考えに変わっていく部分だ」と話す。また、「数カ月前に台本を受け取り、ミン・ギソという人物について深く考えてきた。シン・グ先輩やコン・ヒョジンさんの演技が交ざり合い、ドラマを成功に導いたようだ」と話した。

 チャン・ヒョクが最近最もよく使う言葉は「ありがとう」だという。平凡とはいえない過程を経て軍隊に行き、除隊したチャン・ヒョクが暖かく迎えてくれた視聴者に伝える言葉だ。

ホーム TOP