真夏のような暑さとなった9日、撮影がいよいよ佳境に入ったホラー映画『阿娘(アラン)』の撮影現場(京畿道坡州市ヘイリ)を訪れた。面白おかしいコメディーシーンがよく似合う明るい陽射しの中、ホラー映画の取材とは・・・。この日の天気と取材内容は余りにもギャップが大きかったが、突然何かが出てきそうな薄暗いホラーの世界は、この暑さを和らげるのには十分効果があった。

★女のイメチェンは無罪

 真っ暗な取調室。テーブルの上のノートパソコンを境に向き合って座る2人。張り詰めた緊張感が漂う中で、チョン・ウォンジュン刑事(イ・ドンウク)と容疑者イ・ジョンスの取り調べシーンが続いた。そして彼らの後ろには、無造作に束ねた髪にジーパン、Tシャツ姿の女性刑事が壁にもたれかかって静かに立っていた。この女性刑事を演じるのはソン・ユナ。これまで女性らしく奥ゆかしい女性というイメージが強かったソン・ユナの今回のイメージチェンジは、撮影前から大きな話題となっていた。

 「実際“イメチェン”とまで言うと少し恥ずかしいですね。アクションといってもそれほど激しいシーンがある訳でもないですし・・・。自分としては特に気負いすることなく出演を決めたんですが、変に周りが大騒ぎしてしまって・・・」

 しかし言葉とは裏腹に、今回のイメチェンのためにソン・ユナが並々ならない努力を重ねてきたことが見て取れた。撮影前、アクションシーンのためボクシングを練習していたソン・ユナは、誤って足首を捻挫してしまった。今でもその怪我は治っていないようで、階段の上がり降りでさえ苦痛そうに見えた。またそのか弱い手の甲は、ボクシングのサンドバックを殴るため痛々しいほどに皮が剥けていた。

★ソン・ユナは、姉、叔母、母・・・?

 『阿娘』でソン・ユナの相手役を務めるのは、最近ドラマ『マイガール』に出演以降、人気急上昇中のイ・ドンウク。今回初めての映画出演を果たしたイ・ドンウクにとって、ソン・ユナは8歳も年上のため、お姉さん的存在でもあり大先輩でもある。2人を取り巻く撮影現場は、ホラー映画にもかかわらず始終和気あいあいとした雰囲気だった。また記者会見中にソン・ユナが質問を聞き間違えたり、うっかり返事をし忘れそうになった時には、横からイ・ドンウクがうまくフォローする場面も見られた。

 イ・ドンウクは、演技者として大先輩のソン・ユナについて「先輩からは本当に教わることが多く、また自分の姉のように気楽に接してくれるのも非常に嬉しい」とし、「食堂のおばさんに親近感をこめて“イモ(韓国語で母の姉妹、叔母という意味で、年上の女性に親近感を込めてこう呼ぶ場合がある)”と呼ぶように、先輩のことも“イモ”と呼ぶ時がある」と話した。

 ソン・ユナが少し怒り気味(?)で何か言い返そうとすると、イ・ドンウクはすかさず「あ、違った。時には“母”のように気楽で愛すべき存在」と先の発言を訂正した。ドラマを通じてジェントルマンの印象が強いイ・ドンウクだったが、年上のお姉さんの前では、限りなくいたずら好きな可愛い男の子だった。

★『阿娘』はどんな映画?

 『阿娘』は、身の毛もよだつ連続殺人事件の捜査に乗り出した2人の刑事が、最終的に事件と関係する1人の少女の怨霊にたどり着き、そこで体験する恐怖を描いた正統派のホラー映画だ。映画のストーリーは、朝鮮時代に書かれた小説『薔花紅蓮伝』のベースとなり慶尚南道・密陽に古くから伝わる『阿娘伝説』を原作とし、それを現代風にアレンジしたものだ。監督は新鋭のアン・サンフン監督。今月末に撮影を終了し、7月から公開される予定だ。

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