“青春”と“漫画”、どことなく手触りの似た言葉だ。2つの言葉とも飾らぬ親しみがあり、ちょっと子どもっぽい感じもするが、その辺ちょっと目をつぶって調子を合わせてやりたい気持ちにもなる。青春は大人ぶる必要がなく、漫画は少々強引でも許されるからだろうか。『青春漫画』は、時計の針を20代前半に戻し、“青春”と“漫画”の子ども心で受け入れる準備さえ出来ていれば、十分楽しい時間を過ごさせてくれる映画だ。

 13年間同じ街に住んでいた幼なじみジファン(クォン・サンウ)とタルレ(キム・ハヌル)はこの世に2人といない親友だ。顔を合わせばケンカばかり。でもすぐ仲直りしてしまう。お互いを知りすぎていて“ミステリアス”なことなどこれっぽっちもない。

 タルレはテコンドー学科の学生でスタントマンのバイトをしているジファンに「精神年齢が10歳でとまったヤツ」と面と向かって責める。“心で演じる女優”を夢見るが、極度のアガリ症のためオーディションにことごとく落ちるタルレに、ジファンは“ノミの心臓”とからかう。痛いところを突かれまたケンカするが、ジファンに彼女ができたことで、自分たちも知らないうちに友情の隙間を縫って芽生えていた愛に気づく。

 『同じ年の家庭教師』以来、3年ぶりに再会したクォン・サンウ&キム・ハヌルカップルは、今回の映画でも相変わらずの相性のよさでハチャメチャな20代のハジける恋の物語を繰り広げる。しかし、冷静に見るとき、笑いの軸はキム・ハヌルよりもクォン・サンウにおかれている。




 意地悪なイタズラにハラハラしながら特有の鼻声で「何よ~ もう!」と何度も言うキム・ハヌルの“イイ子ちゃんの演技”は『同じ年の家庭教師』をそのまま踏襲しているが(もちろん3年の月日が流れているのに相変わらずのあどけない顔を維持するのも簡単なことではない)、クォン・サンウは『マルチュク青春通り』『同じ年の家庭教師』のワルでどうしようもない高校生から、間抜けなくらい純真な大学生に変身しきった。

 思わず吹き出してしまいそうなマッシュルームカットに、トレードマークのムキムキ筋肉さえも笑いの種にする才能を発揮したクォン・サンウは、確実に前作『美しき野獣』のヤンチャな演技から一歩前進している。

 ジャッキー・チェンの出生の場面を漫画とアクションを交じえて作った導入部とジファンとタルレが仲良くじゃれ合う姿を丁寧に描いた中盤部まで、『青春漫画』は意外とさっぱりしたコミカルさで穏やかな笑いを引き出すのに成功している。

 しかし後半部に入り、ジファンが思いも寄らない事故に遭ったことで、映画はしっとりとした恋愛映画に急展開、強引に感情移入を要求し始める。前作の『恋愛小説』に続き、青春物語に試練を加えて純愛を強調したイ・ハン監督だが、ここまでやらなくても笑いの軌道を外れることなく漫画よりもっと漫画チックな青春が描けたのではないか。23日ロードショー。

ホーム TOP