今月8日午後4時30分、ソウル明倫洞の成均館大学人文科学キャンパス退渓人文館31504号講義室。‘基礎日本語1’の授業を前に講義室のまわりにカメラ付き携帯電話を持った学生が10数人、集まっている。「キターッ!」。青いベストに紺色のロングスカート姿の女子学生が現われると、シャッターを切る指が忙しく動く。

 カメラ付き携帯のフラッシュを浴びているのは人文科学系列06 番の新入生ムン・グニョン(19)。「写真はダメなんです」。笑いながら‘警告’するが、もう手遅れだ。「イェ~イ!念願がかなった」「わぁ、CMみたい」「(ムン・グニョンの授業の)情報売らなきゃ!」。気絶寸前の男子学生から商魂たくましい現実派まで大騒ぎだ。

 女子大生になったトップスター、ムン・グニョン。これまで特別選考による芸能人の大学入試に対する論議は絶えず取り沙汰されてきたが、ムン・グニョンのケースは特に大きく取り上げられた。昨年ムン・グニョンが自己推薦制(優れた資質を持って自らを推薦する方式)で修学能力試験(日本の大学入試センター試験)の成績と関係なく入学が決まった時、ネチズンたちは激しく非難した。「学校宣伝用の顔に使うのもいいが、特恵性制度を作って芸能と関係ない学科に入れたことは問題」というのがその要旨だ。こうした世論を意識したのかムン・グニョンは「できる限り授業に忠実に出る」と宣言した。彼女に出会える確立がそれだけ高くなったキャンパスは、話題も多くなった。キャンパスには確かにアンチより彼女のファンのほうが多いように見える。

 教室に入ってきたムン・グニョンがある男子学生の横の空席(3人並んで座る机)に向かう。「あのう、席空いていますか?」。はにかむように聞くと後ろの席に座った。思わぬ幸運に恵まれた男子学生に羨ましげな視線が突き刺さる。教材を開いてペンケースを取り出したムン・グニョン。前の席の男子学生と話を交わす。彼女を追いかけてきた学生たちは、どうしても講義室の中に入れずに外に立って地団駄を踏んでいる。窓にはカメラ付き携帯を持った数十人の人の腕が潜望鏡のように出たり引っ込んだりしている。


 まもなく現われた教授が出席を取る。ムン・グニョンの番だ。「あれ?このムン・グニョンって、あのムン・グニョンですか?」教授の言葉にムン・グニョンも学生たちも爆笑した。本格的な授業が始まる。教授がひらがなの起源を説明すると、ペンを変えながら書き取るムン・グニョン。ひたすら真面目だ。

 突然、前のドアがスッと開く。「ムン・グニョンだ!」。ドアの隙間から彼女を見つけて騒いでいる学生が見える。教授は前のドアにカギをかけた。授業の終盤には講義室がさらに騒々しくなった。教授が急いで講義を終わらせるやムン・グニョンはドアの前で待っていた女性とともに教室から素早く外に出た。外で待っていた一団が車に乗る彼女を追いかけて行って叫ぶ。「今度、一杯飲みに行きましょう!」

 ムン・グニョンは‘歴史学入門’‘基礎中国語1’‘基礎日本語1’‘作文の基礎と実際’などの科目を受講する。開講後ほとんど休まずに授業を聞いていて毎日こうした‘幸せな戦争’をしている。

 戦争をしているのは学生も同じ。同じ授業を聞いたり、彼女の行動を把握したりするための競争は予想よりハードだ。成均館大学のコミュニティ‘成大LOVE’には「ムン・グニョンの時間割、買います。謝礼30万ウォン(本気)”という書き込みが掲載されていた。キム・ヨンチョルさん(仮名、経営学科3年)は「受講生名簿がわかる裏の方法を探し出してムン・グニョンが受講すると思われる科目を全部検索した」と言う。この‘裏の方法’とは携帯電話機能で確認できる学士情報サービスにインターネットで接続して調べ出す専門的なやり方。学校内でもこのノウハウを持つ学生は少ない。

 こんな状況になったことで学校はジレンマに陥っている。同校広報チームの関係者は「ムン・グニョンは学校の顔として広報の役には立つが、まかり間違えば学生たちが何の考えもなくムン・グニョンに振り回されるように見えて心配だ」と言った。ちょっぴりほろ苦かったり、喜び叫んだり。‘国民の妹’ムン・グニョンのキャンパスライフはこうしてスタートした。

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