太平洋を渡った韓国の雨がマンハッタンに降り注いだ。オーディエンスは声の限り声援を送り、カリスマ溢れる瞳に魅了された。

 韓国が生んだアジアのスターRain(ピ、本名チョン・ジフン、23)の公演が行われた2日夜、ニューヨーク・マンハッタン34番街のマジソン・スクエア・ガーデンシアター。公演開始(8時30分)2時間前にもかかわらず、すでに観客が100メートル以上の長蛇の列をなしている。

 5000枚のチケットはすでに昨年12月に発売され、1週間でソールドアウトとなった。しかしRainを一目見たいという韓国、中国、日本、台湾、インド、インドネシアといったアジアのファンが大挙ニューヨークに押し寄せた。

 女子高校生同士、高校生の子ども二人と訪れた母親、孫娘とやって来た老夫婦…。アジア系以外の観客もかなり目にした。ある30代の男性は記者に「余ったチケットがあるかと」聞いてきた。

 主婦のイ・ジンスンさん(45)は「アジアのマイケル・ジャクソンを見るためにニューヨーク州から2時間かけて車に乗って息子と娘と来た」と話す。インド系の女性(会社員、26)は韓国語で「オッパ(お兄さん)」という単語を使い「お兄さんのダンスが好きで友達と団体で来た。CDも何枚も持っている」と熱く話した。

 午後8時30分、雲で満たされた背景の画面に雷鳴と共に雨が天井から降り注ぐ。ビリー・ジョエル、エルトン・ジョン、ジョン・レノン、ホイットニー・ヒューストンら世界的なアーティストが立ったステージで行う韓国人アーティスト初の単独公演が始まった。

 Rainがヒット曲の『悪い男』を歌い始めると会場を埋め尽くした5000人のオーディエンスが緑と黄色のペンライトを振って熱烈に声援を送る。Rainが熱唱してダンスが激しくなると「I love rain!」と書かれたプラカードが左右に揺れ、「オッパー!」「sexy!」という黄色い声が飛ぶ。Rainは2階構造のステージを縦横無尽に使い、R&Bやヒップホップなど多様な曲で感性的かつ独自の雰囲気を演出、オーディエンスを完全に魅了した。

 「再び立ったステージ、照明が僕を照らせば」という歌詞で始まる代表曲『It’s raining』が始まるとオーディエンスは総立ちになって一つになる。

 二十歳のある大学生は「Rainの公演は韓国語で行われるが、基本的にアメリカンスタイルだからアメリカの若者にも受け入れられるだろう」と絶賛する。


 この日の公演は開催前からニューヨーク各メディアの注目を集めた。ニューヨーク・タイムズは先月29日付けの特集記事で「すべてのアジア女性の恋人、Rainが米国で成功する初のアジアンポップスターになるだろう」と評価した。この日も会場にはAP通信をはじめ、ニューヨーク・タイムズ、ニューヨーク・ポストといったメディアが取材合戦を繰り広げ、音楽チャンネルのMTVはこの日の公演を全米向けに放送する予定だ。

 専門家らはRainの公演について韓流が太平洋を渡り始めた代表的な事例として評価している。インターネットの普及で世界のどこにいても自分が求める音楽に接することが可能となり、米国のアジア系の若者たちが韓流ブームに加わるようになったと見られる。まだアジア系の観客がほとんどを占めるが、注目度はより高まっている。

 ニューヨークにあるアジア映画専門の映画館やテレビのアジア系チャンネルに多くの非アジア系の人々が高い関心を示しているからだ。ニューヨーク・タイムズは「韓流が携帯電話から韓国音楽まで幅広くアジア系を席巻している」と伝えた。米国でアジア系の人口が今もなお増え続けていることもRainのような韓国人アーティストの見込みを明るくする背景となっている。

 1時間50分間の熱狂的な公演が終わってもオーディエンスはしばらく席を立とうとしなかった。歓喜の声は会場を満たし、ペンライトやメッセージボードはいつまでも揺れた。結局、熱意に負けたRainはアンコールに応えた。そしてオーディエンスはいなくなり、ステージの灯りは消えたが、マンハッタンには相変らず“雨”が降っていた。

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