音楽
ボイストレーナーが選ぶ韓国最高のアーティストは?
口に出せなくても「自分の歌が最高」と思う歌手は数えきれないほど多い。しかし、真のアーティストは誰か、その道の指導者が知っている。声を調練して評価する韓国を代表するボイストレーナー10人に聞いた。最高のボーカリストは誰か?
80、90、2000年代を代表する男女ボーカリストを3人ずつ選定、1~3位にそれぞれ3~1点を与える方式で行われた。時代、性別を問わず最高のボーカリストを選んでほしいという要請に1位チョー・ヨンピル(17点)、2位RUI(イ・スンチョル、11点)、3位イム・ジェボム(9点)という結果が出た。
▲時代の声(男性)、キム・ゴンモ、RUI
80年代部門はチョー・ヨンピルが22点を得て圧倒的な強さで1位に輝いた。「すべてのジャンルとスタイルを情緒的、テクニックで完璧に消化する」「言うまでもない。歌唱力と音楽に対する情熱は今も最高」「チョー・ヨンピルといえば真心という言葉が思い浮かぶ」などの評価がされた。2位は若くして他界した悲運の歌手キム・ヒョンシク(6点)。「彼だけのファンキーでブルージーな歌い方は真似ることが出来ない」。3位は「巨大なエネルギーを放つ火山のような存在」と比喩されたトゥルグックァ(野菊)のチョン・イングォン(5点)。
90年代部門はキム・ゴンモ(16点)がイム・ジェボム(14点)に僅差で上回った。「彼の体には黒人の血が流れている。リズムに巧みに乗る歌手」「ハスキーなR&Bを試み、ストレートで美しい声ばかりだった流れを変えた」といった絶賛が続いた。イム・ジェボムは「韓国歌手にはなかったトーンとパワーを持っている」というのが核心。3位はRUI (13点)だった。
80~90年代で名前が挙がったRUI(12点)が2000年代を制覇した。「自分に合う曲を完璧に分かっている」「第2のチョー・ヨンピル」と呼ばれる。「歌唱力と魅力的な表現力が目立つ」といった評価だ。元ブラウンアイズのナオル(10点)とキム・ボムス(10点)は2位で並んだ。
▲時代の声(女性)、イ・ソニ、イ・ソラ、GUMMY
「発声がいかに重要かを実感させる歌手。あれほど力強く声を出して月日が経っても彼女の声帯は変わらない。話す時の美しい声がこれを証明する」。80年代部門1位のイ・ソニ(16点)に対する客観的だが絶賛する声だ。2位はイン・スニ(10点)、3位はヤン・ヒウン(4点)だった。
90年代はイ・ソラ(16点)、イ・ウンミ(15点)、パク・ミギョン(8点)の順。「本当に独特な音色、原石をどう磨くかを見せてくれた歌手」(イ・ソラ)、「テクニック、エネルギー、カリスマでは最高。ただ多少オーバーな感じがする」(イ・ウンミ)、「歌手は聴かせる面もあるが見せる面もある。その両方を備えている」(パク・ミギョン)。
2000年代はGUMMY(11点)がBig mama(10点)を一歩リードした。共にR&Bスタイルのアーティストであることが特徴。「韓国にR&Bを真似る歌手は多い。 しかし、彼女のR&Bは偽りがなく正直だ」(GUMMY)、「ジャズハーモニーの美学を聴き手に与えた」(Big mama)。3位は華麗に復活したイン・スニ(6点)。
▲韓国人が好む声は?
時代の移り変わりを認める回答者が多くを占めた。80年代は「腹式呼吸を土台にした力強い声」の時代。「喉を主に使った強い声。歌唱力はこの時代の歌手の必須条件だった」という意見が出た。90年代は「自然な声とソフトな声が調和したバラード全盛期」と称えられた。
2000年代については「多様なテクニックの中にさまざまな歌い方がされ、アーティストたちの歌唱力が高い水準に逹した」「ブラックミュージックに対する関心が高まり、ハスキーボイスを好む傾向が見られた」などの分析がされた。
しかし、こんな意見もあった。「韓国人が常に好きな声は元々ハスキーボイスではなく鼻音のかかったソフトでクールな音。ナフナ、チョー・ヨンピル、キム・ジョンソ、キム・ゴンモ、キム・ジョングクといった流れで」「人の声はアナログ楽器にあたる。時代が変わればピアノやバイオリンの音も変わるだろうか?声も変わることはない。編曲の変化による表現の差があるだけ」
▲過去より最近の歌手のほうが歌が上手?
「歌う機会や学ぶ機会が増え歌手だけでなく一般の人々も歌唱力が向上した」というのが大方の意見だ。「歌手を目指すならボイストレーニングを受けることが必須条件になったから」という理由もある。しかし「歌をプロ精神で歌う歌手は減っている」と惜しむ声も多かった。
「音楽にどこでも接することができるが、アーティストの情熱や切実な思いは以前に比べかなり落ちる」「技術的にレベルの高い歌手は多くなったが、真のアーティストは探しにくい」「音楽は時代を、時代の思想を反映する。ボーカルの心が空っぽなら、それは文化ではなく娯楽であるだけ」。