10年余り前、映画監督の朴賛郁(パク・チャヌク、42)は不遇な青年だった。結婚はしたが貯金は底をつき、助監督を辞めてサラリーマンになった。資金が少し貯まると映画を手がけたが、超低予算のデビュー作『月は…太陽が見る夢』はソウルで6600人の観客動員にとどまる惨敗に終わった。生計を立てるために監督はペンを執った。B級映画を独自の視点で綴った『映画を見るための隠密な魅力』(1994)は映画ファンを魅了し、パク・チャヌクという名前は伝説として残った。

 12日、次回作『サイボーグだっていい』の脚本作業を終わらせて現われたパク・チャヌク監督は、もう昔の彼ではなかった。『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』など、新作ごとに熱狂的な反応を巻き起こし、世界の主要映画祭ではVIP 待遇を受けている。そんな監督が2冊の本を出版した。初の散文集『パク・チャヌクのモンタージュ』と映画評論集『パク・チャヌクのオマージュ』だ。

 『パク・チャヌクのオマージュ』は既に絶版となり、古書店で30万ウォンを超えるという『ヴィデオドローム』、監督の孤独な評論家時代を象徴したその本の改訂増補版だ。

 「映画一本を見れば体が堪えます。それほど映画は私にとって刺激的な媒体ですが、この本に掲載した以外の映画を二度以上見ることはありませんでした」

 『ガルシア』『グロリア』『アルカトラズからの脱出』…。埃の積もったビデオ店の片隅に除けられていた多くのB級映画がパク・チャヌク監督の本によって再び息を吹き返した。独自の解釈と魅惑的でリズミカルな文章は強烈な磁力となって読者を惹きつけた。

 2000年の映画『JSA』を基点にパク・チャヌク監督の不遇だった時代が幕を閉じたと同時に監督の映画評論も幕を閉じたことは非常に惜しまれる。

 散文集『モンタージュ』は主にパク監督がブレイクした以降に書いたエッセイと書面インタビュー、制作日誌などを収録した。

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