「シナモズクガニ」が20年ぶりに故郷の臨津(イムジン)江に戻ってきた。

 昔はシナモズクガニを川辺や田のあぜでよく見かけたものだが、ここ20年間、このカニは極端にその数が少なくなっていた。1980年代はじめ、東豆川(トンドゥチョン)に皮革工場が立ち並び、臨津江が急激に汚染され、農薬も大量もまかれるようになった後から、その数が急激に減ったのだ。

 1990年のはじめまでシナモズクガニは1匹2万5000ウォンまで値を上げるほどの貴重な存在となった。しかし1990年台後半、シナモズクガニの稚蟹を放流した後から、徐々にその数が増えてきた。最近は秋になると臨津江で1日3000~4000匹がとれる。値段も1キログラム(約10匹)に2万5000ウォン程度にまで下がった。以前より安くはなったが、1匹2500ウォンならば決して安いとはいえない。




 価格が高いのはその素晴らしい味のため。韓国でよく食べられるワタリガニよりは身が少ないが、その独特な香りが人気の秘密だ。朝鮮時代には必ず王様の食卓にのぼった程の味と香りだ。

 シナモズクガニを一番美味しく食べる方法はケジャン(醤油や味噌に漬ける)。一晩水に浸したシナモズクガニを壺に生きたまま入れ、グツグツ煮立った醤油を入れる。この醤油を一度取り出し、再び沸騰させた後、冷ましてからシナモズクガニの入った壺に入れる・・・という過程を3~4回繰り返すとチャムケジャンが完成する。

 チャムケジャンの一番美味しいところは何といってもカニミソ。濃いオレンジ色のカニミソと共に、殻の裏の方に隠れている茶色がかった青いミソをスプーンでかき出し、炊きたてのご飯を入れて食べるのだ。その味ときたら・・・。韓国では「ご飯泥棒」と呼ばれているのがこのチャムケジャンのカニミソだ。優秀な出汁にもなり、メウンタン(魚介類を使った辛いチゲ)に1匹入れるだけでそのスープの味わいが違ってくる。


 10月末になると産卵の時期に入るが、この頃になると他のカニとは違い、体に毒を持つようになるので要注意。

ホーム TOP