ドラマ
今年の「ヒットコード」はちょっと頼りないヒロイン?
どこか抜けていて見ていても不安なヒロインたちが映画やドラマで大活躍している。女優とキャラクターが一つになったこのヒロインたちは、その頼りなさで見る人の心を開いて観客や視聴者をノックアウトする。
今年最高のヒット映画『ウェルカム・ トゥ・トンマクゴル』のヨイルはその代表的な人物。町内の子どもたちからも変に言われるが、何輪もの野花を髪の毛に挿して野原を歩き回る彼女は誰よりも幸せだ。
互いに銃口を向け合う人民軍と韓国軍の前で「あんたら友だちなの?」と何事もなかったように言いのける彼女の姿はまさに圧巻だ。そんな彼女が呼び寄せた観客はすでに700万人に達しようとしている。
『ウェルカム・ トゥ・トンマクゴル』の幸せなファンタジーがヨイルをどこか頼りないが、元気溌剌としたキャラクターに作ったとしたら、KBSドラマ『バラ色の人生』のメンスンをどこか頼りない人物に作ったのは彼女が経験した「あまりにも現実じみた」状況だ。
劇中メンスンは二人の娘を持つ平凡な家庭の主婦として登場する。自分の懐に金がなければ人間扱いしないという極めて現実的な論理でがむしゃらに生きてきた彼女は、ボサボサのパーマ頭に田舍臭いおばさんファッションにこだわる。
多くの主婦と同じように自分よりも家族を常に優先して思う彼女の人生は突然突き出された夫の離婚要求でヒビが入り始める。心の底からどろどろと燃え上がる彼女を見ていると、もどかしさが先に押し寄せるが、視聴者はそんなメンスンに絶対的な支持を送っている。
視聴率50%を突破したMBC『私の名前はキム・サムスン』もまた同じだ。美人でもスマートでもなく金もなかったサムスンは、3年交際した恋人に振られた「負け犬」として登場した。
しかし、サムスンはどこか頼りない彼女自身が気付いてみれば普通の女性だということを全身で代弁したキャラクターだった。「これは私の話しだ!」。サムスンの姿を見ながら拳を握り締めた女性がどれだけ多かったことか。
前向きな考え方や素直さ、堂々とした態度は彼女を愛される女性へと様変りさせた。彼女の成功記は20代中盤から後半の女性から圧倒的な支持を得て「サムスンシンドローム」まで巻き起こした。
もちろんこうした頼りないヒロインたちの底力が発揮されたのは、キャラクターと役が一致した女優たちの好演があったからだ。丸い目を見開いて静かに笑った『ウェルカム・ トゥ・トンマクゴル』のヨイルは、カン・ヘジョンのひょうひょうとした演技のお陰でより輝きを増した。見た目にまったく気を使わないチェ・ジンシル(崔真実)はアンチをもあっと言わせるほどにずば抜けた演技を披露し、キム・ソナはドラマのために8キロも増量する女優魂を見せた。
こうした「ちょっと頼りないヒロイン」たちの活躍に思い切って美しさを捨ててキャラクターになり切った女優たちの熱演に劇場に行くのが楽しみになり、テレビを見るのが待ち遠しくなった。