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【レビュー】涙涙涙… 激情だけが記憶に残る映画『四月の雪』
『四月の雪』は韓流スターのペ・ヨンジュンとソン・イェジン(孫芸珍)という豪華キャスティングで早くから注目を集めてきた映画だ。
しかし、多くの韓国の映画ファンはペ・ヨンジュンではなくホ・ジノ(許秦豪)監督のために心待ちにしていたはずだ。
『八月のクリスマス』で余命を告げられ、父親のためにビデオの使い方をメモしたジョンウォン(ハン・ソッキュ)や『春の日は過ぎゆく』で別れた恋人の新車に黙々と傷を付けるサンウ(ユ・ジテ)を憶えているなら、その節制された話法に込められた繊細な感性が心に残っているだろう。
しかし『四月の雪』でも同じような繊細さを期待するなら失望するかもしれない。『四月の雪』はペ・ヨンジュンの映画ではないが、既存のホ・ジノスタイルの映画でもない。何気ない日常をエピソードにしたのではなく、初めからドラマチックな状況に導かれていくからだ。
公演の照明監督を務めるインス(ペ・ヨンジュン)は妻がある男と一緒の旅行中に交通事故に遭ったという知らせを受け、妻の浮気を知るようになる。昏睡状態に陥った妻に対する心配より、裏切りの衝撃に襲われたインスは、妻の不倫相手だった男の妻ソヨン(ソン・イェジン)に会う。同じ悩みで苦しむ二人の間は徐々に縮まる。
『四月の雪』で監督は以前とは違い、遠くから見守る代わりに顔に(時には胸に)ぐっとカメラを突き付ける。感情の表現もそれだけ直接的だ。インスは酒に酔って「悲しみは皆捨て…人生は美しく」とあらん限りの声で歌を歌い、ソヨンは道端でも居酒屋でもカフェでも何度も泣く。
こうした典型的な描写からは共感よりも古臭さを印象付ける。苦痛から激情へと二人が通過する感情のトンネルも飛ばすように通り過ぎる。ソン・イェジンは安定した演技を見せ、ペ・ヨンジュンも熱演したが、どうしても「ヨン様」というスターのイメージを拭い去れない。
しかし、この映画には純愛映画では見付けにくい美徳がある。不倫が重なる皮肉としか言いようがない状況の中でも倫理的断罪を急ぐより、理解の糸口を解いて行くことに力を注いでいるという点だ。
ホ・ジノ監督の視線には常にそうした人間に対する憐れみの感情がある。