最近4年付き合った恋人と別れた30歳の女性J。これが初めてではない。

 その度に彼女の側には愚痴を聞いてくれる心強い友人がいた。しかし、三十路の失恋。友人たちは既に近くにいない。結婚して母親になった彼女たちに未だ20代の恋愛を繰り返すJを支える余裕はない。

 一人寂しく別れを受け入れるしかなかったJに思いがけない同い年の「恋愛カウンセラー」が訪れた。彼女のカウンセラーは毎週水・木曜日に放送中のMBCドラマ『私の名前はキム・サムスン』のヒロインサムスン。こうして期待を寄せるのはJだけではない。

 同ドラマホームページの視聴者が共感した台詞を載せる「キム・サムスン語録」のコーナーには、既に1300件以上の書き込みが寄せられている。楽しいコミカルな台詞もあるが、ほとんどは失恋の痛みを「キム・サムスン式のアナログ的感性」から放たれる台詞の数々だ。「キム・サムスン語録」はドラマの人気と共にネットを通じて急速に拡がっている。

 ほとんどが独白形式で物静かに語られるサムスンの台詞は「…の野郎」といった言葉が多く、限りなく低レベルになる可能性もあるドラマのバランスに均衡を持たせる役割を果たしている。

 映画評論家のシム・ヨンソプ氏は「サムスンの台詞は遠回しでなく、非常に直説的に飛び出し、時には田舍臭い情緒を醸したりもする。恋愛でさえ簡単に済ませるインスタント時代、いつも側にあるようなサムスンの言葉が視聴者にペーソス(pathos、哀愁)を与えるようだ」と分析した。

 濃密な恋愛を一度でもしたことがあれば耳に次々と入ってくる美しい台詞を作ったのは誰か?義兄と義妹の愛を独自の視線で描いたドラマ「雪だるま」を手がけたキム・ドウ作家だ。『雪だるま』で倫理の軌道を離脱した愛を美しく昇華させた名台詞を憶えているなら、サムスンの台詞が受け入れられているのも頷ける。

 キム作家の携帯電話に何度も連絡したが、返ってきたのは一本の携帯メッセージだけ。「最近とても忙しくて…申し訳ない^^;;」。しばらくサムスンにだけ専念するため知らない番号からの電話には出ないと言う。まるでドラマの中のサムスンのようだ。

 時には悪戯っ子のような割れた声で、時には真っ黒のマスカラを涙に滲ませて視聴者の共感を得てネット上で話題になっている「サムスン語録」は増えるばかりだ。

 「今、私が泣いているのは彼を失ったからじゃない。愛、あれだけ熱かったものが影も形もなく消えたことが信じられなくて泣いている。愛が何でもないことを知って涙が出てくる。何の力もない愛が可哀相で泣いている」(第1話で恋人に振られた後、男子トイレの便器に座ってマスカラの滲んだ涙を流しながら)

 「あんたら男たちは老けないわけ?腹が出てるくせに若い娘ばかり追いかけて惨めじゃないの?カッコよく年でも取れよオッサンどもが」(第1話で「女性が30になって恋人に会うのは、道を歩いていて核爆弾にぶつかるよりも難しい」と言う結婚相談所の職員に言い返した言葉)

 「私がこの世で一番嫌いなのが、すぐ浮気をする男です。私が世の中で一番嫌いなモノも浮気をする男なんですよ」(第2話でレストランで浮気をする妻子持ちの男性客に激怒しながら)

 「しかも高卒で年上?どこであんなアンパンみたいな女と…。アンパンも賞味期限切れで爆発しそうだな。

声も風邪でも患った猫みたいだし」(第3話でナ社長が息子の連れて来たサムスンを見ながら)

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