米国の「映画神話」の1つ、スターウォーズの完結編『エピソード3・シスの復讐』。

 同映画でパドメ・アミダラ女王役を演じたナタリー・ポートマンは、韓服スタイルのドレスを着用し、頭はかんざしと礼装用の冠をモチーフに装飾した。

 この何とも喜ばしいシーンを考案した主人公は、ILM(Industrial Light&Magic)のコンセプト・アーティスト、イ・サンジュンさん(34)。

 ILMはジョージ・ルーカス監督が設立したハリウッド最高の特殊効果専門会社で、イさんは『メン・イン・ブラック2』、『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』、『ハルク』などの映画制作に携わり、宇宙の生命体や主人公の衣装のイメージをとらえて視角化する作業を行ってきた。

 イさんがILMのインターンになったのは1999年。性に合わなかったコンピューター学科を退学し、97年に渡米留学、サンフランシスコ美術大学3回生の年だった。

 「運が良かったです。初めは2週間の契約でしたが、ルーカス監督は、僕が考案したデザインを見て、正式契約を申し込んできました」。


 映画で韓服をアレンジした理由は、同映画で女王が妊娠するシーンがあったためだ。

 「韓服は、ラインが胸から下に広がる形ですよね。おなかに子どものいる女王の体のラインを隠せるデザインだと思い、衣装デザイナーに強く勧めました。絵を見てもらい、すぐOKが出ました」

 イさんは、衣装のイメージだけでなく、毛の多いゴリラのような「歩くカーペット」というニックネームを持つチューバッカの同族「ウーキー族」など、映画に登場する7つの恒星の宇宙人をすべてデザインした。

 このプロジェクトに携わった2年間、イさんはほかの映画の2~3倍に及ぶ5000枚のデザインを提出し、毎週金曜日にはライバルである同僚とともに審査を受けてきた。

 “暴君”なるルーカス監督は、絵1枚1枚に「脱落」「通過」「最高」の3段階の印を押す。イさんはこれまで「最高」を12回押された。

 前編『エピソード2・クローンの攻撃』でルーカス監督が押した「最高」は、たった4枚だった。

 イさんは先日、ILMからアートディレクターの職を依頼されたが、これを断った。その理由として「会議とセミナーの参加に追われ、絵を描く暇がないのが管理職ですよ」と述べた。

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