李炳憲(イ・ビョンホン)を見て「真の二枚目俳優」という印象を受ける人はあまりいないだろう。

 それよりも口元が印象的な笑みを浮かべる「隣のお兄さん」や「頼もしい青年」といった好感を持っているだろう。

 しかし、今回の映画『甘い人生』(金知雲(キム・ジウン)監督、映画社「ボム」制作)での李炳憲は確かに違う姿を見せてくれる。

 黒のスーツをスマートに着飾って完璧に整えた髪型をしてクールにものを言う李炳憲の姿は、自然に見とれてしまうほどだ。もちろん「ハンサム」というよりは「クール」といった印象だ。

 李炳憲の演じた役は表向きはホテルマネージャーだが、ある組職のナンバー2でもあるキム・ソヌ。冷徹でありながらも完璧に仕事をこなし組職のボス(金永哲(キム・ ヨンチョル)扮す)の絶対的な信頼を受けているが、ボスが極秘に指示した年下の大学生の恋人ヒス(シン・ミナ)の監視を始め、指示に背いたがために取り返しのつかない抗争の渦へと巻き込まれていく。

 李炳憲は繊細なディテールとスタイルを重視する金知雲監督の映像とぴったりとマッチしながらカリスマを発散して映画の雰囲気を圧倒している。

 李炳憲の演技はクールなイメージの前半から、血だらけで拳銃を乱射して復讐に向けて突進する狂気に満ちた後半に至るまで、安定した演技を見せ、周囲からは絶賛の声が溢れている。

 映画を注意深く観れば、李炳憲が今回の作品でどれだけ苦労したのか見当がつく。

 李炳憲が最近、テレビの芸能番組でインタビューに答え、「辛かったことですか?あまりありませんでした。指を折ったり、地面に埋められて2日間雨にうたれたくらいです(笑)」。李炳憲はむしろ肉体的な苦痛よりも精神的な苦痛が大きかったと語った。


 「俳優ならばすべて同じだろう。肉体的に大変なのはどの映画も大差はないから…。特に今回の映画は撮影環境があまり良くなかった。とても寒い日に雨に打たれるシーンを撮影したり、感情移入するのが大変だった。屋内のセットで撮影すればいいのにと思ったことが一度や二度ではなかった」

 李炳憲は「残酷なシーンがとても多く、女性の観客には受け入れられない」という指摘には強く反論した。

 李炳憲は「映画の色感や雰囲気など、全体的なスタイルはもちろん、ソヌの心理を細かく追い掛けながら描かれていてむしろ女性的とも言える。たとえ残酷なシーンが多くても女性が観れば必ず満足する映画だろう」と声を高めた。

 この1年間に『誰にでも秘密がある』をはじめ、『スリー、モンスター』『甘い人生』と立て続けに映画出演した李炳憲は、次回作までしばらく休息を取る予定だ。李炳憲の休息が果たして映画タイトルのように“甘い”ものになるかはライバル映画『拳が泣く』との勝負にかかっている。

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