『甘い人生』はドラマやナレーションにはあまり関心が払われていない。重要なのはビジュアルで、それは監督の意図的な選択であり、ストーリーの不足を完全に忘れさせるほど魅惑的だ。

 若い恋人ヒス(シン・ミナ)の浮気を疑う冷血な暴力団のボスであるカン社長(キム・ヨンチョル扮す)は上海出張期間にナンバー2のソヌ(イ・ビョンホン扮す)に監視を依頼する。ソヌはヒスの挑発的なうなじと悲しげな首すじに同情を抱き、この若い女を解放することになる。その後、ソヌは一人で組織との戦いを繰り広げることになる。

 この簡潔でシンプルなアクション・ノワール映画で監督は台詞ではなくスタイルで発言する。 洒落たホテルのスカイラウンジで生き埋めのため土穴に、焚き木の中で38口径リボルバー、端正なドレスシューズから血まみれのスニーカーに移っていきながらソヌの悲壮と落ちぶれていく過程がリズム良く描かれている。

 イ・ビョンホンのノワール演技も十分に評価されてしかるべきだが、「清潭(チョンダム)やくざ」イ・ビョンホンの敵役のチンピラであるファン・ジョンミンはそれこそ「発見」だ。ファン・ジョンミンは真のチンピラが見せる人間味あふれる演技で「クール」なノワールを温かいものにしている。

 しかし目の肥えた観客にとって『甘い人生』のいつくかのシーンは真新しいものではない。イ・ビョンホンが逆に苦しめられ、血を流している倉庫でいつものように掃除をする中年女性は映画『復讐者に憐れみを』(02年作品)で頚動脈の話をする臓器密売業者の中年女性を思い出させる。

 しかし一般大衆にはヒス(シン・ミナ扮す)の魅力の有無がより大きな疑問だ。ヒスは果たしてソヌの人生を一気に揺るがすだけの瞬間で「甘い」イメージを演出できただろうか。

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