韓石圭(ハン・ソッキュ)にはいつからか、正体不明の霧のようなものがかかっていた。

 ある人にはその何かが神秘的に感じ、またある人にはその不透明さに妙な反感を抱かせたりした。

 しかし、映画『朱紅文字』(ピョン・ヒョク監督、LJフィルム制作)の試写会終了後に会った韓石圭は華やかな姿で独特の笑顔を浮かべていた。

 何か今回の映画に出演したことによって、これまでの苦労から完全に開放されたような自信に溢れた満足そうな表情をしていた。

以下は韓石圭との一問一答。

 「(穏やかな表情で席に座ると自ら今回の映画について語り始めた)人間すべての逸脱を扱った映画だ。主に恋愛を扱っているが、あらゆる逸脱が描かれていると思う」

―『朱紅文字』にすべてを賭けたと聞いたが。

 「俳優として映画に臨む姿勢はすべてを注ぎ込むということと軽い気持ちで楽しみながら演じるという両面がある。今回の映画は自分の出せるものすべてを出そうと努力したと思うし、それだけ重要な映画だった。過去の作品では『グリーン・フィシュ』と『八月のクリスマス』がそうだった。

―『朱紅文字』への出演はどんな意味を持っているか?

 「ちょうど40歳に出演した作品だ。俳優として男は40、女は30で最高の演技を見せることができると思う。生きていく中で最もさまざまな経験を重ねる年齢だからだ」

―以前に言っていた「年を取るほどに演技することが恐ろしくなる」という言葉と相反するが。

 「正直なところ年を取れば新たな経験も減り、自分が生まれ持った才能がどんどんと無くなっていくことを感じる。ふとした瞬間にそのことで悩み苦しんだりもするが、その反対にもなれると信じている」

―ここ何年間は苦労も多く、映画出演が減って収入もかなりダウンしたと思うが。

 「経済的に失ったものはあるが、逆に家族と過ごす時間を得ることができた。妻と3人の子どもと共に大切な時間を過ごすことができた。すべては平等にできているのだ」

―今回は大胆なベッドシーンに挑んだが。

 「韓石圭とイ・ウンジュがベッドシーンを撮ったのではなく、ギフンとガヒという二人の男女が熾烈にぶつかり合う状況を説明しているのだ。観客動員のために挿入したシーンでは決してない」

―共演した3人の女優を評価するとしたら?

 「絵に喩えればイ・ウンジュは絵の具とキャンバスのすべてが用意されて、どう描いても完成するような女優だ。成賢娥(ソン・ ヒョナ)は上質の絵の具とキャンバスを持っている女優で、オム・ジウォンはまっさらなキャンバスが広がる素晴らしい資質を持った女優だと思う。 

―今後、共演してみたい俳優や女優は?

 「一人一人名前を挙げられないほど多い。ロバート・アルトマン監督の作品や『オーシャンズ11』のような映画に出演したい」

―必ず演じてみたい役があるか。

 「『夢』という小説に登場する僧侶役を演じてみたい。すでにペ・チャンホ監督が同タイトルで映画化している」

―ところで、最近は映画出演の回数がめっきり減ったようだが。

 「お分かりとは思うが、さまざまな理由があった。いつまでに何かをするといったことを決めているわけでもなく、徐々に間隔があくようになってきている。

自分でも自分の進度がよく分からない(笑)」

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