前科3犯で出所したばかりの娘、ジョンウン(スエ扮す)は、昔は警察官だったが今はみすぼらしい魚屋を経営する父、ジュソク(朱鉉(チュ・ヒョン)扮す)を好きになれない。

 気難しい性格の父親のせいで母親が早く死んだと思っている娘は父親に対して一度たりとも温かい視線を送ったことはないが、そんな娘に父親は愛情を注ぎ続ける。出所したジョンウンが以前にボスだったチャンウォンに相変わらず苦しめられる中、父親が白血病である事実を知ってからはこうした葛藤はさらに増す。


 映画の魅力は初めの部分にある。反抗的なジョンウンの眼差しや口調は成長した娘と頑固な父親の緊張感を巧みに表現しているが、自分のために父親が片目を失ったという事実を知ったジョンウンは一瞬にして父親に心を開き始めて緊張感は消えていく。

 涙腺を刺激することに徹した後半部分になればなるほど、物静かなストーリーは急激に貧弱になっていく。何よりもテレビドラマのような構図(食卓のシーンなど)は映画的な緊張感を壊している。

 しかし、韓国人にとって“家族”というキーワードは涙と直結する素材でもある。しかし、映画的に、あるいはシニカルに見れば、家族イデオロギーを通じて新派的なカタルシスを極大化するにとどまってしまう。

 『家へ…』(日本タイトル『おばあちゃんの家』)のような繊細な感情の流れには期待しないほうが良さそうだ。イ・ジョンチョル監督のデビュー作。9月3日公開。

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