英国の映画制作会社「ワーキング・ タイトル」は過去10年間に『フォー・ウェディング』から『ノッティングヒルの恋人』『ラブ・アクチュアリー』に至るまで、楽しさと完成度を兼備した作品でロマンチックコメディーというジャンルでその名を広めてきた。

 パク・チェヒョン監督の映画『私の男のロマンス』(7月16日公開)が目指したものは、恐らく“忠武路(チュンムロ/韓国映画の中心地)版ワーキング・タイトル”だったのだろう。

 害虫駆除会社に勤めるソフン(金相慶(キム・サンギョン)扮す)は売れっ子女優のダヨン(オ・スンヒョン)と一緒のエレベーターに乗り合わせ、エレベーターが故障したことをきっかけに親しくなる。

 地下鉄の駅員として働くヒョンジュ(キム・ジョンウン扮す)は交際7年目の恋人ソフンにダヨンが積極的にアプローチすることに苛立ちを感じる。

 『私の男のロマンス』は作品の骨格や表面的な雰囲気からして共同体を成すように暮す友達の話を中心に扱う方式やスターを平凡な家庭に招いて起るエピソードに至るまで、ワーキング・タイトルの映画を連想させる。しかし、『私の男のロマンス』は“忠武路版ワーキング・タイトル映画”というよりは、お粗末な韓国産シチュエーション・コメディーのようだ。

 エレベーター中でゴキブリのためにズボンまで脱いで痴漢と間違われるといったシーンをはじめ、ソフンの職業に絡めた多くのエピソードはあまりにも強引だ。そして4人の登場人物は横一直線に並んだ個性のない子供のようだ。

 普通の駅員でも万人が羨むスターでも、女性は結局、男性の選択を待つしかない存在という描き方をしたクライマックスも拒否感を与える。そして、ダヨンがなぜソフンを好きなのか、ソフンは一体どんな男性なのかという疑惑は最後まで解けない。

 『生活の発見』(日本公開タイトル/気まぐれな唇)や『殺人の追憶』で目が覚めるような発見の快感を与えてくれた金相慶は、この映画でラブストーリーの主人公としていつもの魅力を見せてくれるが、自分が演じるキャラクターに対する明確な方向性を定めることができなかったように見える。

 しかし、この映画にはキム・ソナと並び忠武路で最も優れたコメディー感覚を持つキム・ジョンウンがいる。どう行動して、どう物を言えば可愛く映るかを本能的に分かっている子供のようなキム・ジョンウンは、強引に取り入れたスラップスティック・コメディのシーンで、全体的なリズムを細かく考えなければならない長い台詞のシーンも卓越したアドリブ感覚で演じきった。

 『家門の栄光』から『パリの恋人』まで、キム・ジョンウン独自のアドリブも今となっては一定のスタイルを確立してマンネリ化の危機に置かれているのも事実だ。しかし、こんな演技はもう飽きたと思う瞬間でさえ、キム・ジョンウンの問いかけに応えざるを得ない観客の明るい笑顔がそこにはある。

 こうした強引な設定にもかかわらず、突然ファッションショーのモデルとして舞台に上がることになった不自然な状況でさえ、きれいに着飾った自分の姿に感激して、そこら中の人を捉まえて「きれいでしょ?私ってとてもきれいみたい」と一人で興奮するシーンを見て、どうやったら笑わずにいられるのか。お姫様でいたい女優たちが幅を利かせる忠武路で、人気と共に貧弱にならざるを得ない心をキム・ジョンウンのように表現することができる女優が他にいるだろうか。

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