5月14日、ポータルサイト「ネイバー」で「キム・ジョンフンのジャパン・ポップス・ドット・ネット」というブログを運営するキム・ジョンフンから携帯に電話があった。

 「そんなに凄いなら一人で行って来いよ」

 「滋亨(ジャヒョン)さん、今回は真面目に凄いんだから。安室奈美恵の公演に昨日行ってみたら半端じゃないんだ。滋亨さん、絶対に今日行きましょう。行かなかったら絶対に一生後悔しますよ!」

 最後の方はもうほとんど絶叫に近かった。私は半信半疑で会場のオリンピック公園体操競技場に向かった。キム・ジョンフンは前日に観た安室奈美恵の公演をしきりに絶賛していた。

 「滋亨さん、韓国のオーディエンスのマナーは今一でも、公演の反応は本当に素晴らしいでしょう?だから安室奈美恵も昨日の公演でうれしくなって曲調はそうでないのに今にも笑いそうだった。それでもすぐにその気持ちをぐっと抑えて唇を噛むあの姿…。あーどうしよう、もうすっかり虜だ」

 私は徐々に彼の心に同調していった。キム・ジョンフンは公演後の余韻に完全に浸っていたのだ。素晴らしい公演を観た後には必ずそのアーティストの虜になるものだ。普段の仕事から完全に解放され、音楽の熱気の中で興奮して拍手を送り、一緒に踊って、最高のサウンドを体に浴びれば完全にそのアーティストの信者になる。

 やがて20代初めの女性がほとんどを占める会場に足を踏み入れて公演が始まった。白い帽子にミニスカート姿の安室奈美恵は、公演が終わるまでに6回の衣装交換をして全26曲を歌った。曲と曲の間にはまったくの無駄な空白がなかった。最後まで安室奈美恵は激しくダンスしながら華麗な姿を披露した。

 私は公演が進むにつれていかに自分が食わず嫌いだったかを実感せざるを得なかった。今日、この場所に来ていなかったら完全に井の中の蛙になるところだった。今までに私が観た公演で素晴らしいと思ったニューヨークでのリンゴ・スターのコンサート、エリック・クラプトンの来韓公演、東崇(トンスン)洞のパランセ劇場で観たキム・ヒョンシクの公演と同レベルの感動を安室奈美恵から受けたのだった。

 安室奈美恵はステージを縦横無尽に移動しながら、特に韓国人アーティストが最も不自然になる1小節目と2小節目の間奏部分もまったく違和感を感じさせなかった。大型の鏡と階段を使ったステージを上り下りする安室奈美恵の姿そのものが完璧に音楽と調和していた。振り付けも安室奈美恵は内面の燃える感情をクラシカルな上品さに変奏させて観る側に伝えた。

 それは死闘に近い自制と節制の美の極致だった。オーバーさや不自然な姿はまったく見られなく、音符一つ、呼吸一つ、手先の動きの一つ一つがすべて忠実に表現されていた。

 それはこの地球上に何人といない最上級のアーティストだけが持つ献身の美しさ、儚い時間に対する芸術的勝利、安室奈美恵のオーディエンスに対するエネルギーは愛そのものだった。

 今後、韓国の音楽界は日本の曲を盗作するといった汚名や陰の部分から完全に脱して最善と死力を尽くす観客に対する基本的な礼儀を完全に回復しなければならない。これからは、反日感情ではなく克日の努力と行動が今以上に必要とされるのではなかろうか?

 蛇足だが、日本音楽の専門家、キム・ジョンフンは昨日、東京行きの航空券を予約した。安室奈美恵の来韓公演の後遺症と衝撃のためだ。

『スポーツ朝鮮/放送作家=具滋亨(ク・ジャヒョン) ymkmi@hanmir.com 』

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