スターインタビュー
来韓した在日2世ミュージシャンの梁邦彦
20年前の今頃、東京大学病院に新たな整形外科医療チームが構成されて開かれた説明会の最中に一人の若い医師が駆け寄って行き担当教授にこう話した。「教授、私は医師をやめて音楽をやります」。その瞬間、教授の頭に疑問符が無数に浮かんだ。「いったい何の話だ?」
その青年医師は在日韓国人2世のピアニストで作曲家、プロデューサーの梁邦彦(ヤン・バンオン/44)。梁邦彦は「私よりも医師という職業が似合う人が多くて何よりも音楽をせずにはいられなかった」と語った。5枚目のアルバム『Echoes』のリリースを控え、梁邦彦が来韓した。
「中学生の時にポップスやロックを聴きながら、どんな形でも音楽と関わる仕事をしようと思いました。音楽をやっていたがために家から追い出されて苦労もしましたが、本当の自由を見つけた感じでした」
医師を辞めた梁邦彦は日本人ドラマーの神保彰などとバンド活動を展開し、日本や香港の映画、ドラマ音楽を手がけながらその名を広めていった。
1996年に1stアルバムをリリース、今までにクラシック、ロック、ジャズ、ワールドミュージック、国楽に至るクロスオーバーミュージックを中心に活発な創作活動を展開してきた。自身に影響を与えたミュージシャンとしてバッハやレッド・ツェッペリン、タワーオブパワーの名前を挙げているだけあって音楽自体に対する関心が強い。
「結局、私の音楽世界で最も重要な要素はロックスピリットです。義務的にアルバムを出して単純にヒットさせるのは嫌なのです。私が言いたいことを音楽でどう伝えるかが最も重要なだけです」
梁邦彦のニューアルバムはピアノとオーケストラを基本にバイオリンやギター、アコーデオンといった楽器をアレンジして聴き手を北欧の都市やモンゴルの草原、田植が行われている南(ナム)道の平野へと誘ってくれる。今回のアルバムのためにポータブル録音機を持って世界中を旅して現地の音楽を録音したりもした。
「音楽で木霊を表現したくてタイトルを『Echoes』にしました。
私の音楽を聴いてくれた人々が楽しさを感じてくれたら、それが一つの木霊になるでしょう」