スターインタビュー
2枚目のソロアルバムをリリースした紫雨林のキム・ユナ
キム・ユナは7年前に紫雨林のボーカルとして登場し、不毛な音楽という大地に紫の雨を降らせて林を茂らした。
そして2年半前にメンバーの中では初めてソロアルバム『Shadow of Your Smile』をリリースして本人はもちろん韓国の女性ミュージシャンたちの活躍の場を一気に広げた。そして今回がその2枚目のソロアルバムとなる。
1曲目のタイトルはドイツのライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の映画と同じ『不安と魂』。キム・ユナは「その映画は見たことがないし、部屋の整理をしていた時に中学時代の日記帳から見付けた文句」と言う。
ピアノとタンバリンだけの伴奏に合わせてリバーブさせて歌うキム・ユナの乾いた歌声は、1940年代のエディット・ピアフや70年代のジェーン・バーキンの歌声のように“危険の美学”を聴かせる。
キム・ユナは全曲の作詞、作曲、プロデュースを手がけたが、テレビ収録といった最悪の音響環境でもずば抜けた歌唱力を発揮する貴重なアーティストでもある。
「私が自分自身の声に嫌悪感を持たなくなってからまだいくらも経っていません。2ndや3rdアルバムの頃の私の声は聞くに堪えません。歌に関してはまだまだといった感じです」
キム・ユナは「私にどこからか授かった才能があったとしたら、それは作曲や歌ではなくて他の人が感じることが出来ないものを感じることができる才能だと思う」と語った。
文才としても知られるキム・ユナの歌詞は『愛、時が経てば何でもない心の贅沢』や『私は危険な愛を想像する』といった曲で沸々と沸き起こり、『憎悪は私の力』で遂に爆発する。
「感謝しても感謝し切れない私の父/あなたを死ぬほどまでに憎悪したおかげで/私はまだ生きていられて…」。キム・ユナはこの詞で大衆芸術のタブーを打ち破る。
「父は何年か前にすでに亡くなりました。歌で『父』は一つの象徴であるだけです。私は歌を歌って自分の心の中にある黒い部分をすべて吐き出して幸せになったのです。10代後半から20代初めの頃は怒りと憎悪で満ち溢れていました。社会システムに対する憎悪。その憎悪が私を生きていると感じさせる力でしたが、それが今ではほとんど無くなったので、どこから力を得ればいいかと思いながら書いた曲です」
キム・ユナは「レコーディングをしながら怖かったのは今回が初めてだった」と言う。その恐怖を「私の音楽に私自身が食べられるような感じ」と表現した。「私の“核”となる部分を見せてしまうのではといった感じですね。私の夢の世界を他人に見せているような、そんな危うい感じ…」
「紫雨林も私もとても憂鬱な音楽を多くやってきたので、今秋に出す紫雨林5thアルバムはパンクでもやろうかと話し合っています。今からとても楽しみです」。子供のような笑顔がダークな音楽をまるで吐き出すかのようにやり終えたからか、青白いほどまでに明るく見えた。