スターインタビュー
バークリー仕込みのアルバムで復活したキム・ドンニュル
キム・ドンニュル(30)が帰って来た。
キム・ドンニュルは昨年5月に米国の名門バークリー音楽大学を卒業後に準備を重ねてきた4枚目のアルバム『吐露』を来週リリースする。今年の音楽シーンで最も長く待たされたアルバムの一枚だ。
キム・ドンニュルは10年前に延世(ヨンセ)大学建築工学科1年生の時に友人のソ・ドンウクと「展覧会」というデュオを結成した。その後、大学歌謡祭の大賞を受賞し、翌年の夏からは学校には行かなかった。彼が学ぶべきことは音楽だったからだ。
「展覧会」はアルバム3枚をリリースして解散した。そしてイ・ジョクとのプロジェクトデュオ「カーニバル」を経て、1998年からはキム・ドンニュルはソロとして音楽活動をしてきた。
「アルバムのタイトルを『吐露』にしたのは、“吐き出す”という表現が気に入っているからです。音楽は出産のようなものじゃないですか。バークリーで学んだこと、米国での生活で感じたことのすべてを表現しようと思って完全燃焼しました」
バークリーでキム・ドンニュルは映画音楽を専攻した。多くの専攻の中でも映画音楽の専攻課程にはクラシック科目が多いために選んだ。在学中に国内の映画会社から映画音楽制作のオファーもあったがすべて断った。本人の言葉通り“優等生”だったために卒業を優先させたのだ。
「私が井の中の蛙だったということをバークリーで初めて知ったのです。音楽の天才で溢れていました。それだけに挫折感も感じましたが日本人の友達がこんなことを言ったんです。『あなたはどうして自分が持っているものには目を向けなくて他人にばかり目をやるの?私はあなたのような起承転結がある4分もの曲を書く才能はない』」
その日本人の友達とはキム・ドンニュルの2ndアルバムにも参加したピアニストのウエハラ・ヒトミだ。
キム・ドンニュルはニューアルバムについてこう語った。「子供の頃に外国の音楽を聴きながら『自分はいつになったらこんな音楽ができるのか』なんて思っていました。今回のアルバムはあの頃に夢見た音楽にかなり近づけたかなと思います。簡単に言えば、外国で出しても決して恥ずかしくないような…」
キム・ドンニュルは2ndアルバムをビートルズのスタジオで有名なロンドンのアビーロード・スタジオでレコーディングし、3rdアルバムはロンドン・シンフォニーオーケストラと収録を行った。そして今回はアビーロードでロンドン・シンフォニーオーケストラ共にレコーディングをした。
アルバムは54人編成のオーケストラの壮大なメロディーがメインを成すが、「バークリージャズ」の雰囲気があちこちから感じられた。リードトラックの『今になって』はオーケストラとアコースティックギターの哀愁と美の融合を聴かせる。
キム・ドンニュルの歌はハイトーンではあるが非常にソフトで温かい。続く曲の『蜃気楼』でキム・ドンニュルはサンバのリズムを導入しており、非常に高い完成度を見せている。さまざまな楽器の絶妙なアンサンブルでサンバの楽しさを伝える。
キム・ドンニュルは「アンドレア・ボチェッリやアレッサンドロ・サフィーナのような曲も書いた」と語った。その曲は5曲目の『残郷』で非常に雄壮な秀作だ。ピアノ演奏曲の『River』は注目の若手ピアニスト、キム・ジョンウォンが演奏した。クラシックに近いバークリー大時代に宿題で提出した曲でもある。
そして最後の曲『告別』でようやくキム・ドンニュルならではの低音を聴かせる。湖の底から水面を振動させるようなその低音は、キム・ドンニュルが“アーティスト”という特別な才能の持ち主であることを実感させてくれる。
キム・ドンニュルは今年の夏ごろにコンサートの開催を予定している。98年のクリスマス以来の公演になり、そして新たなミュージシャンとして生まれ変わってからの初のコンサートにもなる。