隣国日本に対して特別な感情を持っている人も、ニューエイジ音楽に関心のない人でも韓国人なら倉本裕基の音楽から逃れることはできない。

 「自分にはまったく関係ない」と言う人でも彼の癒し系メロディを耳にすれば「あっ、これか」と納得するだろう。数多くのドラマやCMのBGMに日本人ニューエイジピアニスト、倉本裕基の曲が使われているからだ。

 4月初旬に9枚目のアルバム『Pure Piano』をリリースする倉本裕基にインタビューした。韓国だけで130万枚のアルバムセールスを記録し、昨年「芸術の殿堂」の有料観客シェア1位公演(91%)となった“スーパーアーティスト”とは思えないくらい地味な姿だった。

 「韓国の人々は本当に良い耳を持っているようです」

 なぜ自身の音楽が韓国の人々に受け入れられているかと思うかと尋ねると、にやりと笑いながらこう語り出した。

 「ピアノという西洋の普遍的な楽器で演奏しますが、同じアジアの人々なので感じることができる情緒的な共通点があります」

 「敢えて韓国ファンを念頭に置いて曲は作らない」というのが彼の説明だ。しかし、98年に韓国で初めてアルバムをリリースした倉本は、他には見られない「知韓派」アーティストに思えた。ハングルの構成原理を理解した倉本は、意味は分からないにしてもほとんどのハングルは声を出して読むことができる。

 ハングルを簡単に覚えたのには訳があった。倉本は東京工業大学で物理学を専攻した科学者でもある。「音楽は音の高さ、長さなどを数学的に配置する作業だと言えます。空気の震動、音波などを理解していると演奏の際に多くの面で役に立ちます」

 学生の時から使っている機材も音楽作業の大きな力になった。しかし「基本となる音楽自体は変わらない」というのが彼の考えだ。「最近でもショパンの『ノクターン』で練習をします。もちろん誰も見ていないのでゆっくりと弾きますが(笑)」

 ニューアルバムも倉本裕基のスタイルを固守したアルバムだ。

 「心の純粋さを感じることができる音楽で構成しました。すべてがピアノソロで13曲を収録しました」

 ステージで演奏しながら自分の音楽を聴いて涙する観客を見れば自分も感極まってしまうと言う。

 「私の音楽を聴いてくださってありがとうございます。癒しの音楽として、生活の中のBGMとして、若しくは涙する時に聴くなど、さまざまな聴き方をしてもらってプラスの音楽になれたらと思います」

 倉本は5月にソウル市内の世宗(セジョン)文化会館をはじめ、全8回の地方公演を計画している。

『スポーツ朝鮮/ハン・ジュンギュ記者 manbok@sportschosun.com 』

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