正直に言って今まで個人的にはキム・ハヌルという女優の演技に引き込まれたことは一度もなかった。彼女が美しく雰囲気のある女性だと感じたことは多かったにもかかわらずだ。

 しかし、20日に公開される『彼女を信じないでください』に登場するキム・ハヌルの姿には文句なしに拍手を送りたい。映画の重圧にも決して押さえつけられることのない彼女は、キュートで真剣な表情を絶妙に織り交ぜて新鮮味のある爽やかなロマンチックコメディーを演じ切った。

 「実は『同い年の家庭教師』が成功してから、コメディーに対するプレッシャーを感じてしばらくはやめようと思いました。何度もコメディーに出たら飽きられるんじゃないかって。でもシナリオを読んでみたら私自身がとても面白くて何も考えずにOKしました」

 この映画でキム・ハヌルは天才的な詐欺師役を演じ、偶然出会った田舍に住む薬剤師(カン・ドンウォン)の家に住み着いて“ロマンスではないロマンス”を繰り広げる。最後までオーバーでも可愛らしさを失わず、時には真顔になって気持ちを打ち明ける時も決してお寒くない彼女の演技は、ロマンチックコメディーというジャンルが要求する最適条件にぴったりと当てはまるようだ。


 「私がほとんどすべてのシーンに登場するような映画なので、現場でもあえて可笑しなことをして映画をリードしようと努力しました。私がコメディー演技をしているのに雰囲気が沈んでスタッフたちが笑ってくれなければ、本当に恥ずかしくてその場にいられたものじゃありません」

 6年前に初めてインタビューした時のキム・ハヌルはかなりの恥ずかしがり屋だった。長い質問にも短く答えるだけで、消極的に見えた彼女の姿からは女優の“オーラ”を感じるのは難しかった。しかし、女優が生まれ変わるのに6年という歳月は充分だったようだ。

 キム・ハヌルは今回のインタビューでまったく別人のような印象を与えた。写真を撮る時には思い切り愛嬌を振り撒き、インタビューも自分から積極的に意見を述べた。しかも言葉の速度まで速くなっていた。この明るさは明らかに自信と密接な関係がある。

 「私、そんなことをしましたっけ?(笑)確かに以前は私がインタビューの時に何も言わなくても勝手に分かってほしいなんて思っていました。実際のところは私が何もわかっていなかったので、話したいこともありませんでした。ところがその後にさまざまな映画に出るようになってからは、随分と前向きで積極的な性格に変わったようです。今ではやりたいことも増えて自信もだいぶつきました」

 キム・ハヌルに女優として今まで観た映画で最も印象に残る女優を3人挙げてほしいと質問すると「『ナチュラル・ボーン・キラーズ』のジュリエット・ルイス、『アザーズ』のニコール・キッドマン、『マディソン郡の橋』のメリル・ストリープ」という意外な答えが返ってきた。


 3人とも6年前の「神秘的で大人しいキム・ハヌル」とも、現在の「キュートで明るいキム・ハヌル」とも随分と距離があるように思えた。

 しかし改めて考えても6年という月日は非常に長い。

 「人に会わなければならないというストレスがひどくて撮影現場で自分が本当に無力だと感じたこともありましたが、今は撮影現場に向かう車の中で鼻歌を歌う自分を発見して幸せで仕方ない」と話すキム・ハヌルの6年後がどうなるかは誰も予測することができない。

 しかし、一つ確かなことは、6年後に再び「6年前の今日」のことを取り上げても、その時はきっと彼女は堂々としているだろう。もしかしたらその時もインタビューをしながらも鼻歌を歌っているかも知れない。

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