スターインタビュー
日本の新国立劇場の演劇を手がけるソン・ジンチェク氏
演劇演出家のソン・ジンチェク(劇団「美醜」代表)氏が、日本の新国立劇場が今年の春に世界初演するアリエル・ドルフマンの演劇『THE OTHER SIDE/線のむこう側』の演出を手がけることになった。
日本政府の予算で運営されている新国立劇場が、韓国人に演出を一任するのは今回が初めて。栗山民也芸術監督が7日訪韓、ソン氏と契約を交わす。
栗山監督は2002年にソン氏が演出したサッカー・ワールドカップ韓日大会の開幕行事を観覧後、「一度演劇の演出を手がけてほしい」と打診してきた。『THE OTHER SIDE』は4月12日から28日まで、東京の新国立劇場小劇場で上演される。
この作品は『死と少女』で有名なチリの世界的劇作家ドルフマンが、新国立劇場の依頼を受けて執筆した新作だ。チリ軍事政権時代の人権弾圧と暴力がもたらした人間の心の奥の傷を告発した『死と少女』は、94年にソン氏が演出して国内に紹介された。ソン氏はこの他にもドルフマンの作品『The Reader』(94年)を手がけている。
今回、日本の新国立劇場が初演するドルフマンの新作を演出することになったのは、『死と少女』の国内公演を観たドルフマンが推薦したからという。ソン氏は「大きな喜びと同時に世界の演劇界のVIPが観る歴史的な世界初演だけにプレッシャーも大きい」と語った。
『THE OTHER SIDE』は20年間戦争を続ける二つの国の国境地帯に住む老夫婦が主人公。一言で言えば、すべての戦争を批判する演劇だ。
国境線が老夫婦が住む家の居間に引かれたせいで、トイレに行く時も入国ビザを申請するのかどうかをめぐってトラブルが起こる。老夫婦は戦死者の遺体を集めて遺族に連絡して金を稼いできたが、ある日見つけた引取人のいない軍人の遺体が、行方不明の息子ではないかという葛藤に陥る。
「演劇は戦争から始まって休戦状態になり、再び戦争が始まってエンディングを迎えます。戦争に関する悲観的な循環論です。休戦でさえもこの演劇では戦争の一部なのです。不条理劇のようでありながらもテーマが明快で…、優れた作品です」
ソン氏は「対立の最前線である韓国に生きる人々から、切実に感じてきた平和への渇望を観客に伝えたい」と話した。
新国立劇場は「現代の日本演劇を代表する女優」である岸田今日子氏をヒロインに起用するなど、トップレベルの俳優・スタッフを投入する。
両国の制作過程にもかなりの違いを感じるというソン氏は、「韓国では開幕2カ月前に俳優に台本が渡されるケースもありますが、日本の俳優は公演まで残り4カ月の今、すでに台詞をすべて暗記しています。劇中、鼻歌で子守歌を歌う俳優は、『公演まであと4カ月しかないのに何を歌うか決まらず、夜も眠れない』と言っています」
ソン氏は「日本側も必要があって私を招きましたが、私にとっても真摯に、丹念に掘り下げていく日本演劇を学び、再充電する機会です」と話した。