慶尚(キョンサン)南道にある双磎寺(サンゲサ)の僧侶たちにとって春は周辺の植物が食材になります。

 気候があたたかくなる頃、椿で花煎(ファジョン)を焼き、雀舌(ジャクソル)茶や梅や桜の花びらをのせてお茶を楽しむのでその味と香りは逸品です。

 トンベックファジョン(椿の花煎)は昔から南道(ナムド)の珍味として親しまれてきた料理です。色が濃く華やかな花は毒性があるとして避けられていましたが、椿だけはその華やかさがむしろ料理の特徴となっていまキ。

 トンベックファジョンは冬のあいだに失われた食欲を回復させる効果がすぐれています。椿以外にも梅や桜・サンシュユ・アブラナ・芥子・イヌナズナなども花煎に使えます。ナズナの花で花煎を作ると、特に脂肪肝によいです。

 花煎をきれいに焼くには弱火できつね色に焼いた後、最後に花びらをのせます。花煎は砂糖をまぶしたお皿に盛りつけます。砂糖をかける理由は花煎とお皿がくっつかないようにするためです。

 トンベックファジョンとともにいただくお茶はなんといっても雀舌茶が一番ですが、春はコッチャ(お花のお茶)もよく合います。

 緑茶には脂肪を分解する成分が含まれており、油で焼く花煎の油っぽさを解消し、コッチャは花の形と香りがそのままいかされ、口の中をさっぱりさせてくれます。

 韓国の精進料理を研究する僧侶ソンジェさん(ソンジェ寺刹飲食文化研究院長)は「春の花を利用したお茶と餅は視覚・味覚・嗅覚など五感を刺激することで、人体の気の流れを良くするのに効果があります。特に四月病や五月病をのりこえ、ビタミンを補うための料理がほとんど」と説明しています。

 しかし、コッチャは多少肌寒い時にしか飲むことができません。あたたかくなると花に毒性が出て、お茶として飲むと人体によくないからです。



ボッコッチャ(桜茶)
*材料:お茶少々、桜少々

1.お湯を沸かし、70~80℃まで冷まし、あたためた湯のみに注ぎます。

2.きれいに洗って水気をなくした桜を2~3個ほど浮かべます。

3.花はお湯が熱いほどはやく変わるので、お湯が熱すぎないようにします。花は一度に多く浮かべるよりは1~2個ずつ浮かべます。花を浮かべてから1~2分以内に飲んでこそ、コッチャを吟味することができます。

4.緑茶を飲んだ後、残りの茶葉にお湯を注ぎ、そこに桜を浮かべて飲んでも緑茶と桜の香りが調和して、またちがった味を楽しめます。



五色トンベックファジョン
*材料:もち米の粉5カップ、かぼちゃ1/8個、ぶどうジュース・百年草の粉・ヨモギ汁など天然の色素各大さじ2、椿・桜・ナズナの花・アブラナなどの花、サラダ油、塩・砂糖少々

1.もち米をきれいにといで、水に12時間ほどつけた後、塩大さじ1を入れて粉にし、ふるいに掛けます。ふるいに掛けた粉は5等分します。

2.かぼちゃは種を取り除き、蒸し器で蒸して中身だけをスプーンですくいます。百年草の粉は水に溶かし、ヨモギは水を少し入れてすります。

3.5等分したもち米の粉にそれぞれ蒸したかぼちゃ、百年草の汁、ヨモギ汁、ぶどうジュースを混ぜてよくこね、直径5センチの平ら状の大きさにします。残りのもち米の粉も同じようにこねます。

4.フライパンが熱くなったら油を少しひくか、大根に油をぬってフライパンを拭きます。フライパンがきれいでないと花煎が焦げつき、色が悪くなるからです。

5.花煎の片面が焼けたら裏返して花をのせて火を通し、再び裏返して焼きます。

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