カン・ドンウォンまたも魅力を発揮 映画『隠された時間』

「大人には一体いつなるんだろう。はたち過ぎくらいらしいけれど、時間は解けないし」

▲「はっきりしている」と誰もが頭ごなしに決めつけることに関して、人は、信頼だけをたのみに「私は信じる」と立ち向かうことができるだろうか。純愛コミックめいた外見に隠されたストーリーが、観客の心に響くかどうかがカギだ。/写真=ショーボックス
▲ ▲「はっきりしている」と誰もが頭ごなしに決めつけることに関して、人は、信頼だけをたのみに「私は信じる」と立ち向かうことができるだろうか。純愛コミックめいた外見に隠されたストーリーが、観客の心に響くかどうかがカギだ。/写真=ショーボックス

 他人の時間は止まっているのに、自分だけ背が伸びて年を取った「ソンミン」(カン・ドンウォン)は、こう語った。満月のときにだけ出現する洞窟、時間を奪っていく妖怪の卵、止まった時間、その時間を超えてつながる少年と少女の心……。こうした漫画のようなストーリーが本物のような説得力を持てるとしたら、それは少年を演じる人物が、時をさかのぼるピーターパンのような俳優カン・ドンウォン(35)だからだろう。16日に公開された映画『隠された時間』(オム・テファ監督)は、このところ韓国映画ではあまり見られなくなったユニークなファンタジーロマンス作品だ。月が満ちてから欠けるまでの間に、少年は青年になって戻ってきたが、大人たちは彼を誘拐犯と考えて追い回し、たった一人の少女だけが彼を信じて行動を共にする。

 パク・チャヌク監督の演出部出身で、独立系の映画『INGtoogi』などで注目されていた新鋭オム・テファ監督の、長編商業映画デビュー作。少年と少女の二人しか知らない秘密の言葉で書かれた日記帳、せっけんに刻まれた顔の彫刻など、こまやかな小道具と美術で「歳月を越えてつながる信頼」という物語の骨組みに肉付けをしていく。停まった時間の中にいる少年たちの姿は、本作最大の見せ場。みんなの時間が止まっている中、自分だけは時間が流れている子どもたちは、配達中のピザやコーラを取って食べ、人を紐でくくり、風船のように浮かべて持ち歩く。繊細な画面構成や、水が流れるようなソフトなカメラワークにも感嘆させられる。少女の耳元からふわりと舞い出る綿毛、瞬きするときの睫毛といったものをいたわるようにクローズアップするシーンや、水に浸かった人の体をゆっくり追っていくカメラなどが、その好例だ。

 劇場街には「カン・ドンウォンが出る映画のジャンルはカン・ドンウォン」というジョークがある。彼が出演する映画ならジャンルを問わない熱烈なファンが厚い層をなしているのに加え、スクリーン上の存在感もそれだけ大きいからなのだろう。本作でもカン・ドンウォンは、「腕を伸ばすだけでバレエになる」という名声の通り、すすけた顔で古びたセーター姿になっても、カン・ドンウォンならではの「気」を溢れ出させる。日本の純愛コミックに似たファンタジーロマンスのストーリーは、好みが分かれるだろう。カン・ドンウォンのファン以外の観客がどれだけ反応するか、という点が興行成績のカギ。もともと秋は、劇場街でロマンス物が強さを見せるシーズンだ。今年はめぼしいロマンス物がなく、再上映された洋画『きみに読む物語』(2004)が漁夫の利を得た。修能(大学修学能力試験。センター試験に相当)が終わった受験生、ロマンスを渇望する女性客を引き付ける魅力は十分あると思える。ただし映画後半でテンポが緩み、上映時間129分というのは少し長いような気もする。12歳以上鑑賞可。

イ・テフン記者
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