インタビュー:キム・レウォン「力のある役を演じたかった」

▲キム・レウォンはゆっくり、そしてはっきりと語った。「初めて検事役を演じたが、セリフが長い上、短時間にそれをこなすのが大変」だという。キム・レウォンは「作品が終わったら、海に行って思う存分釣りをしたい」と言って笑った。/写真提供=HBエンターテインメント
▲ ▲キム・レウォンはゆっくり、そしてはっきりと語った。「初めて検事役を演じたが、セリフが長い上、短時間にそれをこなすのが大変」だという。キム・レウォンは「作品が終わったら、海に行って思う存分釣りをしたい」と言って笑った。/写真提供=HBエンターテインメント

 台本にこのような指示文があった。「獣の鳴き声のように、声にならない声で泣きわめく」。ドラマ第5話、死を予感したキム・レウォンが納骨堂のパンフレットをのぞき込むシーンだった。正義に裏切られ悪の側につくが、最後の力をふりしぼり反撃を始める。「30代になったら力のある役を演じたかった。ただ強いというだけではなく、崩壊直前の試練にも打ち勝つ、そんな男を」。月火ドラマ『パンチ』(SBS)で主人公を演じるキム・レウォンはそう語った。家族と自身の正義を守るため荒々しくなる検事。脳腫瘍が生じ、余命2カ月に。ドラマは視聴率1位(ニールセン・コリア調べ)を走っている。

 「撮影に、映画のプロモーションにと忙しい。番組を見た人から、よくやつれて見えると言われる。1週間に3日以上徹夜で撮影しているので、やせてきたようだ」。キム・レウォンはこの顔が好きだという。「感情移入するのに役に立つ」と語った。15キロ減量したキム・レウォン。余命いくばくもない役割のため、わざと食事を抜いたりしている。2003年の『雪だるま』(MBC)でも、貴公子のような雰囲気を漂わせるため1カ月で15キロ減量した。「減量するのは難しいことではない。ただ、目がくぼんで生気がないように見えてもしっかりしている感じを与えなければならないのだが、きょうの撮影でもそういう部分が足りなかったのではないかと思う」。仁川・永宗島の撮影現場から京畿上坡州のセットに向かう車内で、キム・レウォンが語った。

 脚本家パク・キョンスの作品は全て見た。「雄の重み、逆転の逆転にしびれる」。何しろ含みのあるセリフや設定が多く、演じるのが難しいという。「きょうもチョ・ジェヒョン先輩といろいろ話した。一人ではよく理解できないことも多い」。撮影しながらおののくことも。第5話でチャジャン麺(韓国風ジャージャー麺)を食べるシーンがそうだ。敵方に寝返ったキム・レウォンの事務所に監視カメラを設置した検事総長(チョ・ジェヒョン)と、これに気付いたキム・レウォンがにらみ合いながらチャジャン麺を食べる。「斬新ではないか。とても欲が出た」。没頭すれば俳優同士通じるものがある。「チョ・ジェヒョン先輩と、2日違いで撮影した。麺を平らげ、にらみ合いながらティッシュペーパーで口をふくのだが、僕と動作が全く同じだった。打ち合わせたわけではないのに」

 ごろつき、チンピラ、目的のためには手段を択ばない検事まで、キム・レウォンは日陰で光を発するタイプだ。生まれて初めての主演ドラマ『人生は美しい』(2001)では江原道のごろつき、映画『Mr.ソクラテス』(2005)ではチンピラ、『ひまわり』(2006)では元ごろつきだった。21日公開の映画『江南1970』でも極悪非道なごろつきを演じた。「悪役が好きだ。僕には荒っぽい面がある。感情的にキャラクターをもっと爆発させたいのに、それを抑えようと大変なときがある」

 1996年にデビューし、俳優生活20年。どうすれば格好よく見えるか計算していた新人は、今や脚本家の意図を考え悩む俳優になった。「以前はごろつき役にキャスティングされればごろつきの真似をしたが、今では本物のごろつきになろうと努力する」と話すキム・レウォン。画面の外の世界を見る目も変わった。「闇の世界の人間をたびたび演じていたら、フィクションとノンフィクションの境界線がよく分からなくなる。どのように生きれば正しいのかも考えるようになるし」。悩みはするが、とらわれたくはないという。「一色で記憶されるのは嫌だ。強い役を演じたので、次の作品ではソフトな役がいい。実際に、僕はロマンチックコメディーが得意なのだから」

チョン・サンヒョク記者
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c)Chosunonline.com>
関連ニュース