強い女性・リアルな恋愛描いた韓国映画が人気のワケ

 昨年韓国映画が挙げた注目すべき成果の一つは、恋愛映画の観客動員数新記録樹立だ。それも、1年に3回も記録が塗り替えられた。まず、3月に公開された『建築学概論』が411万人を動員、韓国恋愛映画の歴代興行1位を記録したが、その2カ月後に公開された『私の妻のすべて』は459万人を集め、1位の座を奪った。ところが、『私の妻のすべて』も10月に公開された『オオカミ少年』(7日現在706万人)にその座を明け渡した。

 恋愛映画人気は今年も続いている。『オオカミ少年』はまだ上映中だが、先月公開された『絆創膏(ばんそうこう)』も225万人を動員し、善戦している。1970-90年代まで人気を呼んだが、2000年代半ばから興行失敗を繰り返してきた恋愛映画。今このように再び人気を呼んでいるのはなぜだろうか。

(1)共通点は「強い女」

 最近ヒットしている恋愛映画の共通点は「強い女」だ。男女関係でヒロインが以前に比べ積極的になった反面、男性主人公は気が小さくて女性に対し気持ちの面で押されていることが多い。従来の恋愛映画では男が「攻め」、女が「守り」だったが、その立場が逆転したのだ。たとえば 『絆創膏』でヒロインの医師ミス(ハン・ヒョジュ)はあらゆる手を尽くして消防士カンイル(コ・ス)に恋愛攻勢をかけ、結局交際にこぎ着ける。『私の妻のすべて』の夫ドゥヒョン(イ・ソンギュン)は自分に対し毒舌攻撃をする妻ジョンイン(イム・スジョン)にうんざりしているが、妻が怖くて離婚話も切り出せないというキャラクターだ。 『ラブ・フィクション』のジュウォル(ハ・ジョンウ)は31年間、一度も女性と交際したことがなかったが、恋人になったヒジンは「あなたは31人目の男」というほど屈託がない。映画評論家カン・ユジョン氏は「昔の恋愛映画では男によって女の運命が決まったが、最近はその逆だ。女性の地位が上がったという現実が映画にそのまま反映されており、観客も抵抗なくそれを受け入れている」と話す。

(2)30代以上が共感

 昨年172万人を動員した『ラブ・フィクション』は30代の恋愛を、『私の妻のすべて』は結婚6年目・30代半ばの夫婦を描いている。『建築学概論』は大学新入生の初恋を描いた作品だが、時代背景が1996年という設定のため、当時大学生だった30代半ばの共感を得た。『オオカミ少年』も主人公は10代だが、主な観客の年齢層は30代との集計が出ている。チケット販売サイト「マックス・ムービー」のキム・ヒョンホ室長は「『オオカミ少年』の観客は30代が38%、40代以上が33%を占めており、特に30代の女性客に熱狂的に支持されている」と話す。映画評論家チョン・チャンイル氏は「10-20代をターゲットにしてきた韓国映画のすそ野は既にかなり広がったため、今は30代以上をターゲットにさまざまなジャンルの映画が作られており、恋愛映画もこの影響を受けた」と分析している。

(3)「リアル」な恋愛に引き付けられる

 『私の妻のすべて』を見たクォン・ダヨンさん(34)は「トイレで大きな方の用を足している夫に妻が飲み物を手渡すシーンは、結婚5年目の私たち夫婦の姿とまったく同じ」と語った。この作品も『ラブ・フィクション』も恋愛や結婚の過程で生じる男女間の葛藤(かっとう)や倦怠(けんたい)期をリアルに描いていると好評だった。「ファンタジー恋愛映画」を掲げる『オオカミ少年』も、ヒロインのスニは年を取ってから孫娘に「彼氏は金持ちなの?」「適当に楽しんだら振ってしまいなさい」など俗っぽいアドバイスをしている。

 『建築学概論』を制作した「ミョン・フィルム」のシム・ジェミョン代表は「昔の新派やお涙ちょうだい型の恋愛映画がヒットしなくなったことから、韓国映画界も別の活路を見いださなければならなくなった。また財閥一族が登場したり、ストーリーがあり得ないほど急展開するテレビの恋愛ドラマとも差別化を図った結果、リアルな恋愛で共感を得る方向で力を入れるようになった」と話している。

卞熙媛(ピョン・ヒウォン)記者
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