アイドルがドラマに進出するワケ

アイドルがドラマに進出するワケ

 少女時代メンバーのユナが番組収録のため江原道の村を訪れた。その村に住む白髪の女性は、ユナを見るとまるで孫娘のように喜んで出迎えた。少女時代が国民的ガールズグループだからではない。その女性は「うちのセビョクが来たよ」と言ってユナの手を握った。セビョクは、2008年の連続ドラマ『君は僕の運命』でユナが演じた役の名前だ。

 今年はアイドルのドラマ進出が一層進みそうだ。少女時代メンバー9人のうち4人が今年、女優との「兼業」を宣言した。ユナはチャン・グンソクとの共演でKBS第2『ラブレイン』、ジェシカは同『乱暴なロマンス』、ユリはSBS『ファッション王』、スヨンはTV朝鮮『スピード』(検討中)で演技を披露する。

 アイドル自身のストーリー性やエピソードを盛り込み、彼らが出演することが自然な印象を与えるドラマも制作される。30日スタート予定のKBS第2『ドリームハイ2』にはT-ARAのジヨン、2AMのジヌン、SIISTARのヒョリン、AFTERSCHOOLのカヒらがキャスティングされた。ケーブルテレビチャンネルtvNの『黙れイケメンバンド』にはINFINITEのエルとオーディション番組『スーパースターK3』出身のキム・ミンソクが出演する。ZE:Aのイム・シワンは現在放映中のMBC『太陽を抱いた月』で好演、歌手よりも俳優として注目されている。

 かつて、ドラマに出るアイドルはいわゆる「客寄せパンダ」だったが、今は演技力が問題視されたそうした時代と違う。デビュー前から歌や演技のレッスンを受けている最近のアイドルたちは「マルチドル(マルチ・アイドル)」と言っても過言ではないからだ。その証拠に、昨年の地上波3局のドラマ大賞ではJYJユチョン、BEASTイ・ギグァン、T-ARAヒョミン、AFTERSCHOOLユイ、missAスジ、JYJジェジュン、KARAハラがそれぞれ新人賞を受賞している。

 K-POPが日本などのアジア諸国だけでなく世界で躍進する今、アイドルグループとドラマの出会いは「ウィン・ウィン戦略」と言えるだろう。

 まず、アイドルはドラマに出演することで、若者層だけでなくあらゆる世代で全国的な知名度を上げることができる。40%近い視聴率をマークしたドラマ『君は僕の運命』がユナを「セビョク」という別の名前で有名にしたのがその例だ。芸能人の知名度は、活動の幅を広げ、寿命を延ばす基盤だ。

 K-POPと共に韓流ブームをけん引する両輪のもう一つはやはりドラマだ。出演ドラマが海外で人気を呼べば、おのずと歌手としての知名度も上がる。そして、それに伴う収益は想像をしのぐ。チャン・グンソクが日本で俳優だけでなく、歌手としても人気を呼んでいるのがそのケースだ。アイドルにとって、海外攻略のための布石としてドラマに勝るものはない。

 ドラマ制作会社は、トップ俳優顔負けの人気アイドルを前に押し出すため、PRも楽だ。俳優としてはほぼ新人といえるアイドルの出演料は比較的安い。それに加え、アイドル出演ドラマを日本や中国などが買い付けることを考えると、アイドルは実に「親孝行」だ。

 だが、もちろん副作用のリスクは潜んでいる。ポップカルチャー評論家のソン・シグォン氏は「多様なマーケティング戦略の登場で、音楽性が最も重要視されるべき歌手としての本質が色あせる可能性がある。アイドルたちの音楽性に伸びがなくなれば、長期的にはK-POP界の質の低下を招きかねない」と懸念を示した。また「才能ある新人を発掘するという点で、アイドルの多方面にわたる活躍は意味があるが、彼らに活動の場を奪われた新人俳優たちの喪失感は大きい」と話している。

チョ・ウヨン記者
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