【コラム】CMでしか会えないイ・ヨンエ

申孝燮(シン・ヒョソプ)記事企画エディター兼大衆文化部長
▲ 申孝燮(シン・ヒョソプ)記事企画エディター兼大衆文化部長

 ここしばらく、インターネット上では「イ・ヨンエの風変わりなCM」が話題を呼んでいる。女優イ・ヨンエが映画『親切なクムジャさん』で見せた魔性の女のような衣装にメーク、言葉遣いで視聴者の目をくぎ付けにしている電話会社のCMだ。ネットでは「双子の母親になったのに美しすぎる」「実にセクシー」など、驚きや称賛の声が相次いでいる。イ・ヨンエの変わらぬ美貌と、誰にもまねできないオーラをテレビで見ることができるのは、確かに歓迎されて当然のことだ。

 だが一方で、どこか残念な気持ちがあるのも事実だ。「どうしてこんなに素晴らしいスターを、映画やドラマではなく数十秒のCMでしか見られないのか」と思ってしまう。イ・ヨンエは2005年に映画『親切なクムジャさん』で主役を演じて以降、映画には1本も出演していない。ドラマは03年の『宮廷女官チャングムの誓い』が最後だ。にもかかわらず、イ・ヨンエの存在感が衰えない大きな理由は、定期的にCMに出演し続けているからだ。現在、イ・ヨンエのCM出演料は1年契約で10億ウォン(約6700万円)以上というのが定説となっている。

 CMでしかお目に掛かれないスターは、イ・ヨンエだけではない。女優コ・ソヨンは、07年に映画『お姉さんが行く』、ドラマ『青い魚』に出演したのを最後に、映画やドラマに出演していない。だが、その後も数々のCMに出演しており、今もテレビを付けるとシャンプーをはじめ電気釜、建築資材、電気製品、化粧品、食料品などのCMでコ・ソヨンに出会える。マスコミでは「コ・ソヨンはこの1年間、CM出演料だけで40億ウォン(約2億6700万円)を稼いだ」との報道も飛び出した。

 「ヨン様」ことペ・ヨンジュンも最近、あるガソリンスタンドのCMに出ている。ペ・ヨンジュンが演技をしたのは、ドラマでは07年の『太王四神記』、映画は05年の『四月の雪』が事実上最後だ。今年は自身が企画したドラマ『ドリームハイ』に登場したが、友情出演にすぎなかった。このほか、チャン・ドンゴン、キム・ナムジュ、チョン・ウソン、チョン・ジヒョン、キム・テヒ、イ・ヒョリなどのトップスターたちも、本業が役者や歌手なのか、それともCMモデルなのか分からないほどだ。「トップスターたちがCM専門俳優のようになってしまった国は韓国しかないだろう」と指摘されるのも納得できる。

 もちろん、CM出演自体を邪悪視したり否定的に見ているわけではない。資本主義社会で消費者が望むからといって、俳優たちに「演技だけに専念し、ほかの金もうけはやめろ」と強要する権利や資格は誰にもなく、現実的でもない。ただし、スポンサーや広告制作会社側の責任も無視できない。知名度の高いトップスターを起用して消費者の視線を一気に集める戦略は、カネさえ豊富にあれば誰もが最も容易に用いる広告技法だ。実際、韓国で昨年1年間に制作されたCMおよそ2000本のうち、有名芸能人を起用したCMは65%に上るとの統計がある。米国や英国、フランスなど欧米の先進国では、トップスターをCMに起用するケースは10%前後で、韓国とは対照的だ。消費者に負担が転嫁されるという問題はさておき、このような環境では韓国独自の独創的なCM技法やスタイルの発展が進むはずがない。

 ファンたちも、優雅で風格のあるイ・ヨンエの演技や、ソフトながらカリスマ性あふれるペ・ヨンジュンの演技、力強くも時にはロマンチックなコ・ソヨンの演技を、映画館やお茶の間で見たいという期待が心の底にあるからこそ、わずか数十秒のCMでも注目するのではないだろうか。ファンの支持や声援によって富と名声を得たトップスターたちは、そうしたファンの期待を裏切るようなことがあってはならない。それが、大衆に支持される芸能人の守るべき道理であり、義務のはずだ。

申孝燮(シン・ヒョソプ)記事企画エディター兼大衆文化部長
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