ドラマにあふれる「88万ウォン世代」

▲MBC放送『ハイキック! 短足の逆襲』に登場する就活生ペク・チニは「私はかつて、チャジャン麺を10秒以内で食べて仕事をした」と社長に言われ、面接会場で9.73秒でチャジャン麺を平らげてみせた。ところが、たった1日で首になってしまう。「88万ウォン世代」の悲哀が漂うシーンだ(写真=ドラマ放送時のスクリーンショット)。
▲ ▲MBC放送『ハイキック! 短足の逆襲』に登場する就活生ペク・チニは「私はかつて、チャジャン麺を10秒以内で食べて仕事をした」と社長に言われ、面接会場で9.73秒でチャジャン麺を平らげてみせた。ところが、たった1日で首になってしまう。「88万ウォン世代」の悲哀が漂うシーンだ(写真=ドラマ放送時のスクリーンショット)。

 ケース1。名前ペク・チニ。年齢23歳(推定)。保健所の事務職見習いで就職したが、いつ首になるか分からない。チャジャン麺を10秒以内で食べろと言われるなど、屈辱的な面接の経験は多数。家賃が払えず激狭部屋から追い出されて以来、大学の先輩の家に居候している。学資ローン返済のため激痛をこらえアルバイトをした経験あり(MBC『ハイキック! 短足の逆襲』)。

 ケース2。名前キム・ミホ。年齢25歳。就活中。地方大学を出た後、テレビ局のアナウンサー試験に挑んだが、不足しているスペック(学歴面の条件)や方言から、当然のように不合格に。警察公務員試験にターゲットを切り替え、現在はソウルで受験勉強中。友人を通じ知り合ったガソリンスタンド店オーナーの家に住み込み、その店でアルバイトをして生活費を稼いでいる(MBC『今日みたいな日』)。

 最近テレビを見ていると目にする、ドラマの若き登場人物だちだ。「みっともない」という言葉が口をついて出てきそうなほど痛ましい。大学は卒業したものの、年間1000万ウォン(約67万円)近い授業料のため借金だらけになり、一応は勉強を頑張ったけれど大した学歴にならず、大企業への就職はかなわない。現実を悟ってターゲットを下げてみても、いつ首になるか分からないインターン社員か非正規社員がせいぜいだ。

 ドラマに最近「88万ウォン世代」(平均給与が88万ウォン〈約6万円〉の非正規雇用しかない30歳代以下の世代)があふれている。一時期テレビドラマで愛と夢、そして成功と希望をうたった若い主人公たちは今、悲哀と失敗、挫折と苦笑いを味わうばかりだ。

 88万ウォン世代はいろいろなドラマのジャンルに登場する。KBS放送の帯ドラマ『あなただけ』は、高卒の88万ウォン世代、キ・ウンチャンを男性主人公にした。バックグラウンドもお金もない主人公が、現実の壁を次々と乗り越え、就職や進学という夢をかなえる物語だ。ケーブル・テレビ・チャンネルとしてはヒットといえる視聴率2%を上回り、人気急上昇中のtvN放送『イケメンラーメン店』のヒロイン、イ・チョンアは卒業後もソウル市内の公務員試験予備校に通い悲しい青春を過ごしている。

 先月末に放送されたKBSドラマスペシャルの『1982年生まれのジフン』編では、88万ウォン世代の憂鬱(ゆううつ)な自画像を濃密に描いた。資産管理会社にインターン採用された主人公が、雇用不安に震え、ガールフレンドと一緒に暮らす部屋を探し、挫折を味わう姿が現実を反映していると評価された。

 こうした流れは、放映が終了したSBS放送『ボスを守れ』やKBS『童顔美女』で初めて登場した。スーパーのアルバイトなど非正規職を転々としていた三流大学卒のヒロインが大企業の派遣秘書に合格したり、34歳までアルバイトしかしたことのなかったヒロインがうそをついて正規社員になったりする姿は「極端だが共感できる」と評価された。

 テレビ業界では「若年層の大学授業料や就職に関する悩みが続く限り、こうした登場人物を前面に押し出したドラマが続くだろう」と口をそろえる。しかし「彼らの悲惨な現実をあまりにもコミカルにしたり、極端に描いたりしても問題は解決しない」という声もある。SBSドラマ局のホ・ウン局長は「差別化するためにほかの人が見ようとしないところまでクローズアップすると、まかり間違えば不快で見たくない現実まで過度に描写することになる。そうした登場人物は視聴者にイライラや怒りを感じさせるだけで、それ以上のメッセージは与えられない」と話している。

パク・セミ記者
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